富裕層だけが儲けている!? 「株高」なのに日本経済は低迷しているワケ
結果、「株価は景気の先行指標」という“前提”が崩壊
また、先行して豊かになった層から波及して全体に波及させ経済を成長させるという「トリクルダウン」という説もアベノミクスの根拠とされました。 しかし、2014年にOECDが発表した分析によれば、所得格差は統計的にもその後の中期的な成長に悪影響を及すことが明らかになっています。 ジニ係数が OECD 諸国における過去20年間の平均的な上昇幅である3ポイント上昇すると、経済成長率は25年間にわたり毎年0.35%ずつ押し下げられ、25年間の累積的な GDP 減少率は8.5%となるとされています。 このように見てくると、アベノミクスは「株価は景気の先行指標」の“前提“で政策目標として株価を上げようとしてむしろ「株価は景気の先行指標」という”前提“を壊してしまったのでしょう。
新NISAを活用しグローバルな分散投資をすることがカギ
では、今後日本人はどのように「株高」に付き合っていけばいいのでしょうか? 筆者は、これまで見てきたとおり「株価は景気の先行指標」という”前提“は崩れたことから、賃金が上がることをじっと待つことは得策ではないと考えます。 今まで見てきたとおり、むしろ株価上昇を維持するため賃金は据え置きか微増、少子化に伴い税や社会保障費の負担は増える可能性が高いでしょう。 このようなことを考えると我々国民も株に投資するがストレートな対応だと思います。政府は新NISAを導入し国民がより株式投資をしやすくするように改革を進めています。 新NISAスタート時、注意すべき「3つのポイント」 ただ、ここで、注意すべき点が大きく3点あります。 1.分散投資 まず、株式で個別の銘柄の売買は初心者は避け、分散投資をしましょう。個別株では当然個別の企業の業績に応じて株価に変動があり成功すれば大きなリターンが得られるものの、失敗した場合には大きな損失が生じます。一方で多くの株に分散投資すればリスクを分散させることができます。 分散投資するにためには、ETFへの投資がおすすめです。ETFとは、Exchange Traded Fundの頭文字を取ったもので、上場している投資信託のことです。S&P500などの指標に連動しているETFでは、複数の異なる値動きの銘柄が組み合わせ投資をしているため、リスクを分散することができます。 2.特定の国にだけに投資しない また、特定の国にだけに投資することはさまざまなリスクがありますから、投資の対象とする国も分散しましょう。こうしたグローバルな分散投資についても環境は整ってきていると思います。たとえば、新NISAを使って海外ETFの売却注文も手数料無料の対象としている証券会社も出てきています。 3.働き方を見つめ直す 最後に、最も重要なことは、自身の安定したキャッシュフローの源泉として、いま勤務している企業内に留まるにしても転職するにしても、長期的に働き続けることができるように自分の人生の目標を持ち自己研鑽をすることです。 また、メンタルや体を壊すほど働くことは論外ですが、より副業なども含めてより勤勉に働くことが日本人には必要だと筆者は思います。 そのうえで追加のキャッシュフローの源泉・資産形成の方法として株式投資についても検討することを勧めます。 三木 雄信 元日本年金機構 理事 トライズ株式会社 代表取締役社長
三木 雄信
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