石破茂首相、少数与党で険しい政権運営 くすぶる「予算花道」退陣論
30年ぶりの決選投票の末、首相指名選挙で選出された石破茂首相(自民党総裁)だが、前途多難な状況は続いている。先の衆院選で与党過半数割れとなり、少数与党として臨む今後の国会は、多数派工作が奏功しなければ短命となる懸念もある。自民内には通常国会での令和7年度予算成立を花道とした退陣論がくすぶっており、首相は党内外を意識した難しい政権運営を迫られる。 特別国会召集日の11日に国会内で開かれた自民の会合で、首相は「選挙で示された国民の声に応え、わが党一体となり、総力を挙げて難局を乗り切りたい」と呼びかけた。 衆院選での大敗により「自民党・無所属の会」と公明党の与党会派の勢力は計220人にとどまり、衆院過半数(233)に届いていない。衆院選では派閥パーティー収入不記載事件の影響が払拭できずに厳しい結果となり、第2次石破政権は厳しい船出となる。 過去に少数与党として臨んだ内閣には、政権運営に苦しみ、短命となったケースもある。 平成6年に発足した羽田孜内閣は、首相指名直後に社会党が連立政権から離脱。少数与党となり、政権基盤が安定せずに総辞職に追い込まれた。在職期間は64日間で、戦後2番目の短さとなった。 衆院選での与党大敗は国会のポストにも影響を及ぼしている。自民は衆院予算委員長など複数の主要ポストを野党側に譲った。国会運営を円滑に行うために譲歩したとみられるが、予算委員長は議事進行などで大きな権限を持つ。 そのため、政権幹部は「予算委員会で政府側の答弁に納得いかなければ、『もう一度答えなさい』という場面も出てくるのでは」と懸念する。 自民内ではこれまでのところ「石破おろし」の表立った動きは見られないが、令和7年度予算を成立させた後の退陣論もささやかれる。少数与党として臨む予算審議では、野党から予算委への頻繁な首相出席などさまざまな要求が出ることも予想され、予算案に賛成する条件として石破政権の退陣を突きつけられる可能性もある。 自民ベテランは「普通に考えれば、来年度予算成立後に退陣だろう。今は『石破おろし』をするタイミングではない」と指摘する。ただ、自民重鎮は「政治とカネ」の問題を巡る自民への逆風が収まらないことを念頭に「首相が交代したところで、何か得るものがあるわけでもない」とため息をついた。(今仲信博)