〈ウクライナのNATO加盟が戦争をやめさせる道〉ゼレンスキーの思いとその実現性への壁
彼の計画を推進する旅は、ウクライナが領土と何百の捕虜を獲得した国境越えの作戦の1カ月後に行われた。ゼレンスキーは、その作戦はグローバル・サウス諸国に深刻なショックを与えたと述べ、モスクワがクルスク地方からウクライナを押し返すことができないことは、彼らに「ロシア軍の状況についてのシグナルを送った」と述べた。 彼はロシアが北朝鮮を含む兵員供給者を探しているのは事実だと述べた。韓国とウクライナは、ロシアがウクライナでの戦闘のために北朝鮮兵士を訓練していると主張してきた。 * * *
ウクライナのNATO加盟の現実性
ゼレンスキーの現在の考え方を明確に報道した点でこの記事は価値がある。参考になる。 ただし「勝利計画」の重要要素としてウクライナのNATO加盟を掲げているようであるが、その実現の可能性は、米独の消極姿勢がある中、あまりないように思われる。 NATOは第5条で「加盟国1カ国への攻撃はNATO加盟国全体への攻撃とみなされる」としている、共同防衛条約である。ウクライナがNATO加盟国になれば、そのウクライナを攻撃しているロシアとNATOは戦争状態になることになる。そういうことをNATO諸国が今受けいれる状況にはないと考えるのが自然である。 より現実的なのは、日米安保条約に類似した安保条約を、米国含む西側主要国が個別にウクライナとの間で結ぶことであると思われる。日本は固有の領土である北方領土を旧ソ連そしてロシアに不法占拠されているが、日米安保条約が北方領土に適用されないのは、日本の施政権がおよぶ領土にしか適用されないと同条約に明記されているからである。
これと同様に、たとえばウクライナとロシアで停戦ができ、非武装地帯が設置された場合に、ウクライナの施政権のおよぶ地域に対して適用のある安保条約を結ぶということは可能であると思われる。ウクライナが失った領土に対しては、ウクライナの領土としての立場を北方領土に対する日本と同じように堅持して行けばよい。
ロシアにとっても苦しい戦況
ウクライナ戦争の今後については、確かにウクライナ側の疲れが目立つようになってきている。しかし、ロシアが一方的に優勢でもないと思われる。 東部ではウクライナが押され気味であるが、南部、クリミア方面ではウクライナが優勢であるようにも見える。ロシアはクルスク侵攻を押し戻せないことに見られるように、圧倒的に優勢とはいいがたい。 戦争に対する国民の支持もロシアでは強くなく、多くの若者は国外に逃れ、総動員令も出せない状況にある。北朝鮮に兵士補給を頼らざるを得ない状況は、ロシアの苦境を示している。
岡崎研究所