東京・中央区が森林をつくる? 何が目的なのか
森林は適度に伐採しないと、成長した木の葉っぱが日光を遮断してしまいます。そうなると、小さな木に光が当たらず、森の新陳代謝が進まなくなります。しかし、一気に樹木を伐採してしまうと土砂災害などの原因になるため、歳月をかけて少しずつ間伐・植林を繰り返さなければなりません。 中央区は、東京都西多摩郡の檜原村(ひのはらむら)と協定を結び、檜原村の数馬(かずま)地区に放置されていた森林3.5ヘクタールで定期的に「間伐」「下草刈り」「枝打ち」作業を始めました。区民からボランティアを募り、毎回20名前後が作業に参加しています。 「当初、3.5ヘクタールから始めた『中央区の森』は、年を経るごとに拡大しています。現在、数馬地区37.4ヘクタールと南郷地区4.9ヘクタールが『中央区の森』になり、間伐・植林作業をしています。南郷地区は戦後に植林された人工林ですので、中央区では単に間伐・植林をするだけではなく、人工林を元の広葉樹林に戻す取り組みも進めています」(同)
中央区内の公園やバス座席などに活用
中央区の森から切り出された木材は、区内の公園のベンチや中央区が運行しているコミュニティバスの座席、遊歩道のウッドブロック、小学校や環境情報センターといった公共施設の内装材に活用されています。 新国立競技場も木材がふんだんに使われたデザインが採用されたように、昨今は建築現場でも木材が見直されています。そのため、「中央区の森」と同様の事業を始める自治体も出てきました。 さらに、農林水産省は2004(平成16)年に品種改良で花粉を出さない無花粉スギを開発。農林水産省や自治体は、昭和40年代に放置されたスギを無花粉スギへと植え換えています。定期的な間伐は無花粉スギへの植え替えを促進することにもつながります。 中央区が始めた森を守ることは、ヒートアイランドの緩和や都市の緑化、林業の振興といった効果だけではなく、都民の健康対策にもなっているのです。 (小川裕夫=フリーランスライター)