「103万円の壁」が浮き彫りにしたもっと大きな問題、日本は高福祉高負担と低福祉低負担のどちらを目指すのか
■ 究極の撤退戦「高福祉高負担」か「低福祉低負担」か 突き詰めると、国民民主党は本来、日本維新の会が手がけようとしていた低福祉低負担による活力・成長路線の政策を主張しているのに対し、自由民主党と公明党、立憲民主党は高福祉高負担で分配志向、現状維持を求めて政策を立案していることが、今回の103万円の壁事案では明らかになったと思います。 これは、出生数が大きく減り、外国人に来ていただかないと日本の経済・競争力が保てなくなっている現状において、今後しばらくは増え続ける高齢者を中心とした社会保障をどう成り立たせるか、その道筋を示すという議論です。 ただし、当面の財源がないのは事実で、国民民主党が立派な方向性を示しても、その原資が国債発行でやんすとなると、それは結局、未来に返す借金で経済を成り立たせるだけの話で、単にMMT理論の亜流程度の扱いになりますから着地が割と大変です。 ここから先、国民民主党の意向通りに進むのか、良きところで破談にするのかは石破茂さんの総理としてのお考え次第な面もありますが、国民民主党を切る場合、若者を中心とした有権者のニーズに応じなかった自由民主党というレッテルを貼られることになります。 それに対抗し得る、何かすごく良い感じのイシバノミクス風の経済政策パッケージは必要になることでしょう。国民からすれば、先を見て政策的にどうのこうのというよりも、いま手取りが少なくて困っている俺をどうにかしろという声に対して、どんな政策を打ち出すのかが求められているわけですから。 山本 一郎(やまもと・いちろう) 個人投資家、作家 1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。東京大学政策ビジョン研究センター客員研究員を経て、情報法制研究所・事務局次長、上席研究員として、社会調査や統計分析にも従事。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。日経ビジネス、文春オンライン、みんなの介護、こどものミライなど多くの媒体に執筆し、『ネットビジネスの終わり(Voice select)』『情報革命バブルの崩壊 (文春新書)』『ズレずに生き抜く 仕事も結婚も人生も、パフォーマンスを上げる自己改革』など著書多数。 Twitter:@Ichiro_leadoff 『ネットビジネスの終わり』(Voice select) 『情報革命バブルの崩壊』 (文春新書) 『ズレずに生き抜く 仕事も結婚も人生も、パフォーマンスを上げる自己改革』(文藝春秋)
山本 一郎