中部電力が「脱・浜岡」できない理由
■自動車産業、リニアの開通による消費電力の拡大… 浜岡再稼働の動きはこうした内部事情に加え、自動車、製鉄などの主要産業が立地する中部財界のプレッシャーが無視できない。トヨタはもちろん、2027年にはJR東海が東京-名古屋間でリニアを開通させる。 JR東海が想定するリニアの消費電力は、東京-名古屋間でピーク時に約27万kW。45年を見込む大阪までの全線開業時には約74万kWに達し、浜岡5号機の出力(138万kW)を半分奪ってしまう計算だ。 JR東海の山田佳臣社長はリニア計画について「電力がない状態のシナリオに基づいてはいない」と述べ、浜岡再稼働を公然と後押しする。中部経済連合会には中部電力の三田敏雄会長を筆頭にJR東海、トヨタ系の役員がそろっており、その結束は他地域以上に強固だ。 安全審査を申請したこの日は全国的に大雪。厳冬気味だったこの冬だが、電力危機は叫ばれていない。浜岡の必要性が市民の「肌感覚」で実感されていないことだけは確かだ。 (ジャーナリスト・関口威人)