中部電力が「脱・浜岡」できない理由
中部電力は14日、国の要請を受けて運転停止中の浜岡原発(静岡県御前崎市)4号機について、新規制基準への適合性確認の審査を原子力規制委員会に申請した。同じく停止中の3号機も来年度中に申請、再来年の津波対策工事の完了を踏まえて再稼働を目指す。 午前中、阪口正敏副社長が国に申請書類を提出したのを受け、名古屋市の本店で会見した増田博武・原子力部長は「今回はあくまで再稼働とは切り離した申請。現時点で再稼働については申し上げられない」とした上で、最新の地震、津波対策に火山、竜巻対策まで盛り込んだ今回の申請内容について「新基準には適合していると思っている」と自信をのぞかせた。 安倍政権での原発再稼働方針、都知事選での脱原発2候補の落選などの強い「追い風」。とはいえ巨大地震のリスクを抱える「世界最悪の立地」であることに変わりはない。電力各社の中でも原発依存比率の低い中部電力が「脱・浜岡」に踏み切れないのはなぜなのだろうか。
■対策工事費3,000億円、かさむ燃料費 浜岡原発は1976年に1号機の営業運転を開始。80年代以降、福島第一原発と同型の沸騰水型軽水炉(BWR)の3、4号機に加え、改良型(ABWR)の5号機も増設、合わせて約362万kWの発電能力を備えた。それでも火力発電、水力発電と比べ、中部電全体の発電量比率では1~2割に過ぎなかった。 福島での事故を受け、2011年5月6日に当時の菅直人総理が浜岡全機の運転停止を要請。直後の夏は企業活動や市民生活への影響が懸念されたが、節電努力と旧式火力の運転継続などで乗り切った。ただし12年7月には新潟の上越火力発電所(出力238万kW)が稼働を開始。高効率化を図る西名古屋火力発電所7号系列(同231.6万kW)も、3年後の17年の稼働を見込んでいる。 浜岡ではその間、国が求める津波対策として、高さ18mの防潮堤建設を着工。建屋内外の浸水対策や非常用発電機の増設も進め、海抜40mの高台にまでガスタービン発電機を設けた。 ところが12年3月末、国の有識者会議が出した南海トラフ沿いの大地震による被害想定の見直しで、防潮堤をさらに22mにかさ上げする必要に迫られる。新規制基準でフィルター付きベントの設置も求められた。対策の総費用は約3,000億円に上る見込みだ。 天然ガスを中心とした燃料費は円安で増加の一途。1月末には3年連続の赤字決算を公表、14年3月期の連結業績予想も100億円下方修正し、750億円まで赤字が拡大すると見込んだ。4月からはついに家庭用を含む電気料金の値上げに踏み切る。