日本国債の流動性が改善、マイナス金利とYCC廃止で日銀支配薄れる
(ブルームバーグ): 日本銀行が3月19日の金融政策決定会合でマイナス金利とイールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)政策を廃止して以降、日本国債の取引が増え、流動性が徐々に改善し始めた。
日銀は金利の上昇を抑えるため、7年以上にもわたりYCCや国債を買い入れで市場機能を封じてきた。結果として日本国債の発行残高1097兆円の半分以上を日銀が保有しており、正常な状態とは言い難い。債券投資家を対象に日銀が行う調査「債券市場サーベイ」では市場参加者と取引増加の必要性が示唆され、植田和男総裁も国債買い入れをいずれ縮小する意向を示している。
ただ、債券の売り手と買い手の希望価格の乖離(かいり)を示すビッド・アスク・スプレッド(20日平均)は少なくともこの半年で最も縮小している。これは、日本国債を売買したいトレーダーが増え、市場の流動性が回復していることを表すものだ。
三井住友信託銀行の瀬良礼子マーケット・ストラテジストは、日銀は国債市場から「少しずつ手を引いていくのであろう」と予想する半面、「機能度の改善と不必要な混乱を招かないというバランス」の中で、慎重に国債買い入れの減額を行っていくのだろうとの見方を示した。
日銀の国債保有残高が2008年以来初めて縮小へ、7-9月期にも
金融政策見通しを反映するオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)は、日銀が政策金利を現在の「ゼロからプラス0.1%」のレンジから年末までにプラス0.2%まで引き上げる可能性を織り込んでいる。今後は国債利回りの上昇が見込まれ、少しでも高いリターンを海外市場に求めてきた国内投資家の資金が国内に回帰する可能性がある。
しかし、一部の指標は国債市場のゆがみがすぐに解消される可能性に懐疑的な投資家の見方を表している。国債利回りがモデル推定値からどれだけ乖離しているかを測るブルームバーグの指標が今年に入り上昇していることはその一例だ。