『厨房のありす』晃生の死の真相と思いが明らかに 怪しすぎる“真犯人候補”誠士と蒔子夫婦
『厨房のありす』が繰り返し説いてきた“助け合って生きていくことの大事さ”
ありすもまた、倖生のことを一人で何とかしようとしていた。だが、水族館デートの帰りにありすは倖生の作り笑顔を指摘したことで「俺の気持ちなんかありすに分かんないだろ!」と言われてしまい、喧嘩になってしまう。そんな彼女を鼓舞してくれたのは、なんと百花(大友花恋)だ。お弁当を持って来てくれた時の暴言を謝罪しに「ありすのお勝手」にやってきた百花は、自分にはないものをたくさん持っているにもかかわらず、「自分は空気も読めないし、気も使えない」と落ち込むありすに「そんなのは他の人に任せればいい」と言う。「人間はもともと一人じゃ生きていけない」という和紗の言葉にも通ずるその台詞は本作の重要なテーマかもしれない。心護が三ツ沢家のみんなをはじめ、いろんな人の協力を得てありすを育ててきたように、人間が一人でできることには限界がある。だからこそ、助け合って生きていくことが大事なのだと、このドラマは繰り返し繰り返し説いてきた。 百花の言葉を受け、ありすはおでんの屋台を開き、倖生と金之助を招待する。二人が暖簾をくぐると、すでに心護と定一郎(皆川猿時)が待っていた。大根、たまご、はんぺん、餅巾着……。おでんにはいろんな魅力のある具材が集まっているが、どれも一つだけではおでんにならない。それぞれの具が良い味を出し合って、美味しいおでんになるのだと、ありすも自分なりの方法で相互扶助の重要性を伝える。 ありすの言いたいことを理解した金之助は後日、みんなの力を借りて飼育小屋を完成させた。すると虎之助は、自分が友達に自慢したせいで金之助に無理をさせてしまったことを謝る。そんな虎之助の頭を撫で、「めちゃくちゃうれしかったよ」と笑顔を見せる金之助。ありすが言うように、晃生も金之助と同じ気持ちだったのだろう。大切な人には自分のために無理をしてほしくない。けれど、大切な人にとって頑張る理由があるというのは幸せなことなのだ。その矛盾の中で人は生きている。だからこそ、大事なのは一人では無理だと思った時に頼れる人がいること。「倖生さんは1人じゃないです。私たちの家族のようなものです」というありすの言葉が、倖生の頼れる場所を作った。 晃生の死の真相が明らかになり、残る謎は誰が彼に横領の罪をなすりつけたかということ。ありすは倖生に真犯人を見つけようと提案する。そんな中、25年前にありすが巻き込まれた火事の原因が放火で、未知子が誰かに殺されたという可能性が浮上。もし、それが真実だったとしたら、未知子を殺した犯人は晃生に罪をなすりつけた人間と同一人物なのだろうか。これまでは誠士(萩原聖人)が最も怪しい人物として描かれてきたが、改ざんされたと見られる臨床試験の資料を燃やす蒔子(木村多江)の表情も意味深に映し出され、いよいよ分からなくなってきた。この夫婦、怪しすぎる。
苫とり子