【レビュー】M4搭載のiPad Proはスペックも価格も圧倒的!
最新鋭のM4チップを積んで高速化を果たし、タンデムOLEDディスプレイを搭載したM4搭載iPad Pro 13インチと、同時に発表されたApple Pencil Pro、Magic Keyboardについて、試用機材をもとにレビューする。 【もっと写真を見る】
5月7日にM4搭載iPad Pro 11インチ/13インチ、M2搭載iPad Air 11インチ/13インチが発表され、15日に発売される。ここでは最新鋭のM4チップを積んで高速化を果たし、美しいタンデムOLEDディスプレイを搭載したM4搭載iPad Pro 13インチと、同時に発表されたApple Pencil Pro、Magic Keyboardについて、試用機材をもとにレビューしよう。 予想に反して、パフォーマンスは大幅向上 筆者が借りたのはM4搭載iPad Pro 13インチと、Apple Pencil Pro、Magic Keyboard。 2023年の11月に発表されたM3から、あまりにスパンが短い(ちなみに、M1M2は約20ヵ月、M2M3は16ヵ月、M3 M4はわずか6ヵ月)ので、筆者は内心M4というよりM3改のような存在ではないかと思っていたのだ。アップルの説明では第2世代3nmテクノロジーとなっているが、M3も3nmだし、タンデムOLEDに対応するための、ディスプレイエンジンを搭載しただけのチップセットではないかと疑っていたのだ。 しかし、ベンチマークを取ってビックリ! M4チップと、iPad Proの前モデルであるM2のCPUコア単体の数値をGeekBench 6で計測すると、M2の46.8%増し、マルチコアで50.0%増し、GPUで17.2%増しとなっている。 ハードウェアもOSも違うので、直接比較することに意味はないかもしれないが、M3搭載のMacBook AirとM4を比較すると、CPUシングルコアで19.0%、マルチコアで23.0%、GPUのMetalで11.4%向上している。プロセスルールはM1が5nm、M2が第2世代5nm、M3が3nm、M4が第2世代3nm、プロセスルールが変わらなくても設計の改善やクロック数の向上で処理速度は上げられるということのようである。 ちなみに、このスペックは1TBモデルと2TBモデルの話。256GBモデルと512GBモデルは、高性能コアが43で、RAMが168GBとなっている。小さい字で書かれているのでご注意を。 過去のアップル製品の中でもっとも美しいタンデムOLEDディスプレイ さらに、iPad Proに搭載されるM4チップの特徴は、ディスプレイエンジンを搭載していること。このディスプレイエンジンの搭載によって、2枚のOLEDディスプレイを重ねて各ドットの輝度を精緻に制御し、従来では考えられない輝度、コントラストを実現する。 実際のところ、コントラストや彩度の大きな写真を見ると、M4搭載iPad Proは驚くほど高精細で鮮やかなディスプレイを実現している。 いろいろなディスプレイを見比べてみると、Studio Displayはいうに及ばず、新しいM2搭載iPad Airとひと目で分かる違いがある。1世代前のM2搭載iPad Pro 12.9インチもディスプレイが美しいことで知られていたが、見比べると黒の部分がM4の方がより黒い。M2でも、日常目にするほとんどのディスプレイより美しいのだが、それよりさらに黒が黒くなり、色彩が鮮やかに見えるのだから驚いてしまう。コントラストがハッキリすると、写っているものの凹凸がはっきり見え、肌の質感がよりしっとりと見えたり、岩肌がよりごつごつと見える。 写真、動画、3Dグラフィックスなどを扱うなら、新しいiPad Proは必携だといえるだろう。これまで、見えていなかった写真やグラフィックスのディテールが浮き上がってくるはずだ。 ちなみに、iPad Proの11インチのディスプレイサイズは変わっていないが、12.9インチ13インチはわずかにディスプレイサイズが大きくなっている。 逆に、このM4チップとタンデムOLEDディスプレイ(と円安)のために、本機は非常に高価になっている。たとえば、最終的にウェブサイトでしか見ない写真の仕上げや、白黒2値のマンガでの作業が基本なのであれば、iPad Airでも十分かもしれない。iPad AirもM2を搭載しているし、ディスプレイもP3対応のLiquid Retinaディスプレイだ。ここでコストセーブするのも手かもしれない。実際のところ、筆者が日常作業する分には、M4とM2の違いはまったく感じない。 しかし、従来M2のiPad Proを使っていて、多レイヤーのイラストのハンドリングに困っていたり、8K動画の描き出しに時間がかかっていたり、3Dグラフィックゲームの動作速度に不満があるなら、iPad Pro M4が大きな力になるはずだ。 また6Kまでの外部ディスプレイもサポートしている。 画面のコントラスト差は歴然 実際に、コントラストの強い写真を表示して、M4搭載iPad ProとM2搭載iPad Airを比較してみた。 もちろん、ウェブ経由で写真を見ても圧縮はかかってるし、ご覧になっている方のディスプレイ性能にも左右されるから、どこまで伝わるかは分からないが、肉眼でみるとかなりコントラストに差が見える。黒の黒さが段違いだし、ネオン管の鮮やかさがだいぶ違う。 手元にあった、iPad Pro 12.9(第6世代)や、MacBook Pro 14インチ(M1 Pro)と比べても、差は大きくはないがそれでもM4搭載iPad Pro 13インチの方が美しい。一番違うのは黒の濃さだ。 1.3mm薄く、103gも軽くなっている 本体の薄さも驚異的。13インチモデルも11インチモデルも薄くなってるのだが、11インチモデルはバッテリー容量を稼がなければならないのか、13インチモデルの方が薄い。11インチモデルは5.3mmだが、13インチモデルは5.1mmしかない。 2018~2022年のiPad Pro 12.9インチは、歴代6.4mmだったので、1.3mmも薄くなったことになる。数字で見るとさほどでもないが、実際に比べてみると、こんなに差が大きい。 さらに重さは682g579gと、100g以上も軽くなっている(11インチは、466g444gと22gの差、いずれもWi-Fi仕様)。 違いはそれだけではなくMagic Keyboardが685g666gと、こちらも軽量化されている(実測値、13インチの場合)、合計の重さは1374g1251gと123gも軽くなっている。従来、iPad Pro13インチにMagic Keyboardを装着するとかなり重かったが、これでMacBook Air 13インチと変わらない重さになった。 Apple Pencil Proは、絵を描く人なら手放せなくなるはず そして、最後に、Apple Pencil Proである。 これは、価格も同じなのでApple Pencil(第2世代)の事実上のリプレイスだといえる。ただ、今回発売されたM4搭載iPad Pro、M2搭載iPad Airでは、Apple Pencil(第2世代)は使えないし、以前の機種でApple Pencil Proは使えない。なにか、世代間の技術上の問題があるのだろうか? Apple PencilもMagic Keyboardも、新しいのを買わなければいけないのでコスト負担が非常に大きい。 新しいApple Pencil Proの追加機能は、握るとペン先や、色、太さなどのメニューが出てくるスクイーズと、回転軸方向を計測することでカリグラフィや平筆的な描画が可能になるバレルロールと、それらの動作をTapTicエンジンで伝える触覚フィードバックだ。 まだ、ほとんどアップル純正アプリしか対応していないが、Fresco、Procreate、ClipStudioなどのアプリが対応してきたら、絵を描く人は、これなしではいられなくなると思う。 しばらくの間、Apple Storeでコンフィギュレーションを変えながら、預金残高とにらめっこする日が続きそうだ。 筆者紹介――村上タクタ 趣味の雑誌を30年間に600冊ほど作ってきた編集者・ライター。バイク雑誌「ライダースクラブ」で仕事を始め、ラジコン飛行機雑誌「RCエアワールド」、海水魚とサンゴ飼育の雑誌「コーラルフィッシュ」、デジタルガジェットの本「flick!」の編集長を約10年務めた後退職。現在フリーランスの編集者・ライターであり、ウェブメディアThunderVoltの編集長。HHKBエバンジェリスト、ScanSnapアンバサダー、mmhmmヒーロー。iPhone、iPadなどのデジタルガジェットや、バイク、クルマ、旅、キャンプ、絵画、日本酒、ワインと家族を愛する2児の父。 文● 村上 タクタ 編集●飯島 恵里子/ASCII