37歳記者もダマされかけた「偽警察からの電話」その手口をリポート 各地で被害、2億円超詐取も
「あなた名義の銀行口座が、マネーロンダリングに使われていた」――警察などをかたる電話で、多額の現金をだまし取られる被害が相次いでいる。「このままでは逮捕、勾留される」などと不安をあおられ、2億円以上を振り込んでしまったケースも。 【画像】被害状況をまとめた図表。億単位の被害も相次ぐ 実はこれを書く記者(37歳男性)も、こうした電話に遭遇し、危うく話を信じかけてしまった経験がある。犯人の手口はどのようなものか。実体験をもとにリポートする。 ■「警視庁捜査二課」から「香川県警本部に出頭して」 「○○さん(=記者)のお電話ですか。警視庁捜査二課のオオタニマコトと申します。香川県警からの協力要請を受けて、お電話しました。今はご自宅ですか? 念のため、周りに話を聞かれないような場所に移動してほしいのですが......」 その電話は、突然舞い込んだ。2024年のゴールデンウィーク谷間の平日、17時過ぎ。記者は在宅勤務中。番号は非通知。怪訝に思っていると、中年男性風の「警察官」は単刀直入、こう告げてきた。 「突然ですが、○○さんに、香川県警本部まで、身分証を持って出頭していただきたい」 予想もしない展開に、「は?」と頭が真っ白になった。それを見透かすように、「警察官」は穏やかな口調で続ける。 「実は、香川県警がある事件を捜査する過程で、あなた名義のA銀行のキャッシュカードが発見されました。こちらの口座が、マネーロンダリングに利用された疑いがあります」 鼓動が早くなる。 出頭? マネーロンダリング? 香川まで? 仕事は? どうすれば――?
2億円以上をだまし取られるケースも
あなたは、もうわかっているだろう。これは、典型的な詐欺電話だ。 「警察官などをかたって電話し、逮捕・勾留などをほのめかして、現金を振り込ませる手口の特殊詐欺事件の発生については認知しています」――J-CASTニュース編集部の取材に、警察庁広報室もこう答える。 その手口はこうだ。 (1)警察官など公的機関の職員を名乗って電話し、「あなたの銀行口座(携帯電話、保険証などのケースも)が、詐欺・マネーロンダリングに使われていた」などと告げる。 (2)電話やLINE上での「事情聴取」に誘導する。 (3)逮捕・勾留を示唆し、不安をあおる。 (4)「保釈金」「捜査への協力」などの名目で、指定した口座に現金を振り込ませる。 警察官や検察官など、複数人が役割を演じる「劇場型」の犯行が目立つ。件数の統計などはないというが(警察庁広報室)、この1年ほどは各地で、被害がたびたび報じられている。 23年11月、千葉県松戸市で起きた事件では、70代女性がなんと約2億5000万円を失ってしまった(NHK)。24年2月には、長野県の70代女性が1億円あまりを(NHK)、この5月にも茨城県の30代男性がやはり1億円弱をだまし取られるなど(テレビ朝日)、被害額が大きいケースも。 日本将棋連盟会長・羽生善治九段の妻・羽生理恵さんも5月9日、Xで、やはり「神奈川県警捜査2課の青木」を称する男から電話があったというエピソードを明かした。 それにしても、被害者はどうして、こんな電話にだまされるのだろうか。実際にだまされかけた、記者の体験談に戻ろう。