迷走するローマに最適な人物。「私はそのために呼ばれた」“修理工”クラウディオ・ラニエリに託された最重要タスク【コラム】
「クラブにとってプラスとなる」ローマに今必要な人材とは
口を閉ざし続けるフリードキン・オーナーについて、「彼らは就任当初からそのようなスタイルを貫き、何も語らず、一つのタイトルを獲得し、2度も決勝に導きました。それに難しい財政状況を解決した企業家です。彼らに助言が必要とは思えません。 ただ、父から教わったのは、『会長とは常に表に立って責任を背負う存在であるべきで、チームだけでなくクラブのために働く全ての人々を守るため、批判や反対の声から防波堤とならなければならない』ということでした」とフランコの死去のあと、10/11シーズンに限り、自ら会長職を務めたロゼッラ女史は、父から学んだ会長としての覚悟を語っている。 さらに、「トッティのようにイタリアのサッカーを理解し、ローマを愛する人物は、クラブにとってプラスとなるでしょう。トッティであれ他の誰であれ、そうした人物が必要です」とローマにとってシンボリックな人物の幹部入りを主張していた。 ラニエリは、ローマにすべてを捧げるローマ人であり、エレベータークラブのレスターを奇跡のプレミアリーグ制覇に導いた名将だ。危機に瀕するチームにこれ以上最適な人物はいないだろう。 73歳の老将は、カリアリを率いた昨季限りで、サッカー界からの引退を表明していたが、ローマの危機のために立ち上がった。今季はチームの指揮を執り、来季からはテクニカル・ディレクターの職に就いて、チームをサポートすることになるという。
ラニエリに託された最も重要なタスク
ロゼッラ女史が希求したトッティの幹部入りは実現してはいないものの、ローマにとって象徴的な人物が、クラブのマネージメントに携わることになった。ローマでの指揮はこれで3度目。サポーターの愛が熱すぎるゆえ、難しいと言われる環境も熟知している。 スタイルに固執せず、与えられた駒や戦力で、チームを改造する名手でもあり、それゆえ、“修理工”の異名をとる。 レスター時代を含め、多くのチームでは4-4-2を採用し、レスターでは4-2-3-1を試行したこともあった。昨季まで指揮したカリアリでは3バックを導入していたこともあり、ローマでは3-5-2を取り入れると予想される。 実験的な要素が強かったセンターバックでのアンヘリーノの起用は終わり、本来のポジションであるウイングバックに戻り、センターバックには、代わってマリオ・エルモソ、あるいはマッツ・フンメルスが配置されるものと見られる。 中盤で唯一ポジションが確定されるのは、クアディオ・コネだろう。機動力と強さを兼ね備え、ラニエリが多くのチームで必要不可欠としてきたタイプのプレーヤーだ。 攻撃は、アルテム・ドフビクとパウロ・ディバラの2トップ。セカンドトップのディバラの代役には、マティアス・スーレが起用されることになるはずだ。 そして、最も重要なタスクの一つとなるのが、ブライアン・クリスタンテ、ジャンルカ・マンチーニ、主将のロレンツォ・ペッレグリーニの再生だ。主力の3人はサポーターから戦犯扱いされ、容赦ないブーイングを浴び、著しくパフォーマンスを落とした。彼らの復調なくして、チームの復活はない。 12位に沈むローマは、今季は特にアウェイで苦戦を強いられ、勝利に手が届いていない。代表戦明けの初戦は、その苦手とするアウェイで首位ナポリとの一戦を迎える。さらに2戦目は、もはや“格上”と言わざるをえないアタランタとの対決。極めて厳しい2連戦が待ち受ける。 ローマの“修理工”は、この困難な2試合を乗り越え、見る影もなくなってしまった名車を、眩しく光り輝く名車に蘇らせることができるだろうか。 (文:佐藤徳和)
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