共創デザインの鍵は「一枚絵、日常使い、事業シナジー」
単なる協業と共創の違い
これから事業化をしていく実証段階の新規事業の芽も見逃せない。今回の受賞プロジェクトでは、廃食用油を原料とした国産SAF生産や藻類×アクアポニックスの取り組みがそれに当たる。各企業のアセットをフル活用し、今後の拡大へのロードマップも明確に描かれているのが特徴だ。 ■小さなプレイヤーから生まれる 大きな動き ローカル発の新たな動向として審査員に評価されたのが、徳島県上勝町発の「reRise TOKYO」のプロジェクトだ 。20年以上前に日本で初めて「ゼロ・ウェイスト宣言」を掲げた町で、徳島のバイオベンチャー、スペックが主体となり「reRise」という地域資源を循環させる仕組みを構築してきた。それを今度は都市部でも横展開しようと、三菱地所と手を組み、同社が大規模再開発を進める東京・丸の内エリアでリサイクル率100%を目指す。今回、このプロジェクトは新設された「ローカルインパクト」部門で受賞した。 現段階での社会的なインパクトの規模は 小さいと感じられるかもしれない。だが、審査員のKESHKI代表取締役CDOの石川俊祐は「小さなプレイヤーが大企業と手を組み、周辺から攻め入るように大きな動きとして広がっていく。日本でローカルからじわじわと社会を変えていく動きは増えていると思います」と指摘する。「企業だけのかけ算ではなく、市民も巻き込んでいく」共創は、長期的に見ればかかわりしろが増え、社会的なインパクトが大きいと考えられるのだ。 単なる協業と共創との違いについて、山中は「事業シナジーがお互いにあり、アセットを出し合い、ともに成長して発展していけるかどうか」という視点を提示する。また、複雑化する社会課題を解決するには、見せかけの共創ではいけない。本記事で審査員の片山幹雄も指摘するように、山中も「複数の企業を横並びにするだけではなく、誰が何をするのか、それぞれの役割をはっきりとさせなければ、シナジーが見えてこないですし、社会的なインパクトも起こしていけません」と語る。 2社以上が手を組むことでどんな未来を描き、どう社会実装させていくのか。今こそ共創のデザインが求められている。 山中哲男◎25歳でハワイでコンサル事業を立ち上げたのち、2008年トイトマを創業。代表取締役を務める。バルニバービ、ダイブなど5社の社外取締役を務める。著書に『相談する力』がある。
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