「だよね」の地位を奪った言葉、「それな」。その正しい使い方とは?言語学者が10代娘から学ぶ“謎な日本語”たち
たとえば「かわいいは正義」や「おいしいは正義」なんかがある。「肉は正義」とか「寿司は正義」とか食事では贅沢なものが目立つな。個人的に好きなのは「笑顔は正義」と「優しさは正義」だな。 三女:うちは「休み時間と給食は正義」だと思ってる。休み時間と給食のために、めんどくさい学校に行っていると言っても過言ではないね。 次女:意外と小学生らしくて安心したよ。あたしは「睡眠は正義」かな。 長女:次女、何時間でも寝てるよね。私なら「スイーツは正義」! 昨日もらったケーキ食べよっと!
三女・次女・父:だからダイエット失敗するんだよ! ■「正義構文」とは 「正義」は大事ですが、同時に危険です。「正義」よりも「正義感」が危険なのかもしれません。誰かが社会的に間違ったことをしていたら、その人を糾弾し罰することが正義だと考えると、個人攻撃も私的制裁も正義となります。 そうした誤った「正義感」がはびこる社会はいじめが横行し、けっして住みよい社会とはなりません。 「法律は正義」「権力は正義」「犠牲は正義」「努力は正義」「自由は正義」「数は正義」「安さは正義」など、一見どれも正しそうに見えますが、それらは進みすぎると問題を起こすものばかりです。一面的なものの見方を強制するのは危険です。
しかし、若い世代で使われている正義構文は、個人の趣味や嗜好を表す正義であり、害悪はありません。 「カレーは正義」「スイーツは正義」「スニーカーは正義」「バッグは正義」「にゃんこは正義」「ぬいは正義」「2次元は正義」「筋トレは正義」など、他者に押しつける正義ではない点で好感が持てます。 なお、正義構文に似た構文に「○○は裏切らない」構文というのもあります。たとえば、「筋トレは裏切らない」であれば、筋トレを継続していればかならず結果が出るという意味で使われ、「○○は正義」の論理と共通しています。
ほかにもさまざまな「若者言葉」がありますので、その深みと味わいをを感じてみてください。
石黒 圭 :国立国語研究所教授、総合研究大学院大学教授、一橋大学大学院言語社会研究科連携教授/石黒 愛