<高校サッカー>星稜が大会No.1ストライカーを封じた想定外の作戦
高校サッカー選手権の準決勝が11日に国立競技場で行われ、富山第一(富山)が四日市中央工(三重)を、星稜(石川)が京都橘(京都)をそれぞれ破り13日の決勝戦へと駒を進めた。 ■京都橘対策の”小屋松シフト” 星稜の勝利に終わった準決勝第2試合。その焦点は、星稜の「小屋松封じ」にあった。大会No.1ストライカーの前評判に違わぬプレーを見せていたJ1名古屋内定のFW小屋松知哉。その彼に対して星稜が施したのはマンツーマンで選手を貼り付けるという策だった。ただし、ありがちなストッパーの選手をぶつけるという手ではない。ボランチの平田健人が守備になると下がっていく形のマンマーク。セオリーとはちょっと異なる「マーカーの後ろにフリーの二人(センターバックの二枚のこと)がさらにいる」(河崎護監督)という小屋松シフトだった。 この入念な対応策は、小屋松に対する「あれほどの選手、そうはいない」(河崎監督)という高い評価の裏返し。1カ月前に行われた高円宮杯プレミアリーグ参入戦でも星稜は、京都橘と対戦しているのだが、そのときは1―5で記録的な大敗を喫してしまっていた。小屋松に単独ドリブルからの痛烈な一撃を浴びるなど、内容も壊滅的。それを踏まえて、試合の2日前から徹底して仕込んだ守備のシフトだった。大学チャンピオンに輝いている大阪体育大学の北村公紀コーチを「助っ人指導者」として招いて守備対策のヒントをもらった。 戦術面だけでなく、心理面での準備も十分だった。マーカーに指名された平田は前試合で警告を受けており、この試合でも警告を受けるようなら決勝は累積警告で出場停止という状況だったが、「あんなすごい選手を警告なしで90分抑え切れるとは思っていない。最初から(決勝に出られなくなることは)覚悟していました」と断言。小屋松と準決勝で心中する覚悟を固めて試合に臨んでいた。 ■京都橘にとって想定外だったマンツーマン 京都橘側も、星稜が小屋松対策をしてくること自体は想定内。ただ、「まさかマンツーで付いてくるとは思っていなかった」と小屋松自身が語ったように、ここまで徹底してくるとは思っていなかった。「ずっと隣に(マーカーが)いてやりにくかった。戦略的に星稜のほうが上だったということだと思います」(小屋松)と、その策にハマってしまったことを認めた。 試合終了直後には「応援席の出られない選手のこととか考えて少し涙が出てしまった」と言うが、取材に対応するころには吹っ切れた様子も見せた。「周りを生かし切れなかったこと、マークされる中で力を出せなかったこと。どちらも自分の力不足」と話しつつ、「濃い3年間でした」と高校サッカー部としての生活を総括した。