黒部新拠点に司令塔 YKK AP「30ビル」 10月運用、本社機能も
●全国25工場を統括 富山県に生産拠点を置く建材大手YKK AP(東京)が10月に運用を開始する黒部市内の新拠点「YKK AP30ビル」に製造の司令塔を置くことが9日、同社への取材で分かった。全国25カ所の工場の生産を統括する生産本部が入り、災害などの際に都内の本社を代替する機能も備える。約200人が勤務する予定で、建材事業の創業の地・黒部を基点に生産を展開する姿勢を鮮明にする。 【写真】11月の開館へ工事が進む「YKK AP技術館」(同社提供) 30ビルはYKK AP黒部製造所の敷地内に建設し、名称は創業30年の2020年に整備計画がスタートしたことに由来する。鉄骨造・一部鉄筋コンクリート造で地上3階、延べ床面積6941平方メートル。投資額は約50億円を見込む。 生産本部は全国の工場の生産量の調整や品質・安全管理を担い、現在は黒部製造所の事務所を使用している。人事や経理、広報といった本社機能は黒部製造所に近接する「YKK50ビル」に入居する。これらを30ビルに集約することになり、広報担当者は「製造と本社機能の連携強化にもつなげたい」と話す。 YKK APは東京・秋葉原の「80ビル」に本社を構え、黒部の「50ビル」に本社機能を備える。二つのビルはファスニング事業を手掛けるYKKのオフィスも入っており、30ビルはYKK APが単独で使用する初の自社ビルとなる。 ●展示施設11月に開館/技術、商品の進化を披露 30ビルの隣りには、1959(昭和34)年に完成したアルミ押出工場をリノベーションした展示施設「YKK AP技術館」が11月に開館を予定する。ものづくりに挑み続ける歴史や技術、商品の進化を伝える。 館内には草創期の製品として、66年発売で爆発的にヒットした住宅用アルミサッシ「ハイサッシ」を展示する予定。住宅の大量供給が求められた高度成長期にアルミサッシの普及に貢献したことを紹介する。 2005年に掲げた「サッシメーカーから窓メーカーへの転換」も取り上げる。09年に樹脂窓の販売を本格的に始め、断熱性能の高い窓の開発してきた歩みをたどる。 施設は2階建てで、延べ床面積4490平方メートル。展示室や事務所を備える。再生可能エネルギーやリサイクル材を活用し、環境に配慮する。近隣住民や取引先、社友や家族の訪問を想定し、入館料は無料とする。投資額は24億円。 ★YKK AP(東京) 1957(昭和32)年設立。住宅、ビル用建材の製造、販売。資本金140億円。富山県内に生産拠点を置き、海外は11カ国・地域で事業を展開する。2024年3月期の売上高は5381億円。従業員は国内外に1万7500人。富山県内では7月末時点で約4千人が働く。