一村「大回顧展」の舞台裏 知られざる生きざま解説 県奄美パーク美術講演会
東京都美術館(東京都台東区)で開催中の「田中一村展 奄美の光 魂の絵画」(同館など主催、9月19日~12月1日)について、その舞台裏を学芸員が解説する美術講演会「展覧会の舞台裏~田中一村展ができるまで」が13日、鹿児島県奄美市笠利町の県奄美パークであった。企画から関わった東京都美術館の学芸員中原淳行(あつゆき)さん(56)が、約300点の展示作品を通して見えた一村の生きざまの魅力について語った。 一村(1908~1977)は栃木県出身で、50歳で奄美大島に移住し、数多くの奄美の自然や生き物を描いた画家。 作品展は一村が神童と称された幼年期から、晩年の奄美大島での作品まで300点超を紹介する過去最大級の回顧展。絵画作品だけでなく、一村がお礼として描いた色紙絵やスケッチ、工芸品なども展示しているのが特徴。 中原さんは一村が描いた年代・年齢ごとに展示した300点超の作品を通して見ると、評伝からは伝わりにくい一村の「描く喜び」が見えてくると解説。「だれに褒められるわけでもなく、(奄美の)自然と接する中で、彼自身にしか味わえなかった至福の思いを何度も味わい、それが次の絵への挑戦の原動力につながっていたのでは」と考察し「作品と画家としての生きざまの軌跡、両方を味わってほしい」と話した。 聴講した奄美市名瀬の60代女性は実際に作品展を見てきたと話し、「奄美では清貧の画家というイメージだが、作品を通してみると確かに奄美での印象と異なって感じた。舞台裏話を聴きもう一度見に行きたくなった」と語った。