日銀がこれほどまで円安を「無視」する3つの理由とは何か
それが、21世紀に起きた世界金融危機(リーマンショック)で見方が逆転したと思ったのだが、現在の経済学者、中央銀行の関係者は、依然としてFEDヴューの世界に生きているようである。 ■中央銀行の政策ターゲットはどこに向けられるべきか この対立は「バブルへの対処法」という狭い観点で見るべきでない。「中央銀行の政策ターゲットは実体経済か金融市場か、どっちなんだ?」という、より大きな問題を提示しているのである。
現在の経済学と中央銀行の人々の立場は、実体経済がターゲットであり、その価格である物価のコントロールに金融政策は専念するというものである。しかし、このスタンスを取っているとしても、最終目的は、物価の安定を通じた「日本経済の健全な発展」である。その最終目的を達成するために必要であれば、実体経済も金融資産市場もどちらも政策のターゲットになるはずである。 また、日銀の役割は、金融政策とともに「金融システムの安定」に貢献することであり、この2つの機能は等しく重要である。そうであれば、金融政策においても、金融市場が当然視野に入るべきである。
ではなぜ、このようにやや柔軟に考えずに、文字どおり、しゃくし定規に物価に専念し、為替相場には関与しないという姿勢をかたくなに守ろうとするのだろうか。それは、冒頭に挙げた第3の理由、すなわち、まじめすぎる専門家集団であるということだ。日銀は専門家集団としてあまりに健全すぎ、同時に謙虚すぎるのだ。 どういうことか。日銀の考えはおそらく以下のようなものだ。 自分たちは専門家として政府から独立した。物価に専念できるように組織の法律も改正された。悲願の独立性を得た。1980年代のバブル時の例に代表されるように、つねづね「物価以外の要素を見ろ」という圧力に屈して、金融政策が歪められてきた。だから今後は、物価以外を見ろという要求には応えてはいけない。