ホンダのライダー育成は、日本だけでなく広く”アジア圏”も視野に。一方MotoGP復活に向けて四輪部門との協業も拡大……ニューウェイの出番も!?
■二輪開発にHRC Sakuraも活用
以前HRCは二輪のレース関係業務のみを担当する会社だったが、四輪のレース部門を統合して今年で3年目……二輪部門と四輪部門の協業を実現するのは、新体制になった当初から目指されていたことだが、それは徐々に実現されてきているという。それも活かしつつ、アプリリアから新たなテクニカルディレクターであるロマーノ・アルベシアーノを獲得することで、苦戦が続くMotoGPでの復活を目指している。 「四輪部門と二輪部門が一緒にやるというのは、だいぶ進んできています。すでに四輪のエンジニアが二輪の部門に転属するということも実現しています」 「四輪だけが優れているわけではもちろんありません。でも、これまでとは違う視点で見ていくという観点で言えば、二輪部門と四輪部門が一緒にやったり、開発施設を共有したりというメリットはあります。HRC Sakura(F1用をはじめ四輪用エンジンやパワーユニット、車体の開発拠点)の施設を二輪開発に使うということも始まっています」 「その上で、即断即決ができるような体制を築き上げました。それで開発のスピード感を上げましたということです。ロマーノさんにアプリリアから来てもらってやりたいのは、もう少し現場、つまりヨーロッパ側で物事を決められるような体制を作るということです」
■空力開発なら、ニューウェイさんに頼んでみては?
ホンダのMotoGPマシンの弱点は、空力面にあるのではないかと言われることもある。しかし渡辺社長は、空力”だけ”に問題があると考えているわけではないようだ。 「課題は空力というよりも、二輪マシン1台分をちゃんと見きれていないというのが一番大きいと思います。空力だけ直せばいいということではないと思います」 「エンジンパワーの出し方と車体のあり方とか、そういう部分も含めて1台全体を見てやらないといけません。エンジンパワーがバーンと上がればいいというモノではない……我々は他社に比べて全体を見れていなかったと思います」 「色々な要素が上がってきているのは事実です。だいぶ追いついてきた。でも、ひとつブレイクスルーがあると、もう少し改善できるんじゃないかと思うんですけどね」 ホンダはF1で、2026年からアストンマーティンと組むことになっている。そのアストンマーティンには、空力の天才と言われる伝説的デザイナー、エイドリアン・ニューウェイが加入することになった。ニューウェイはこれまで、数々のF1チャンピオンマシンの開発を担当してきたが、ヨットの開発など、他分野での空力・流体力学の開発にも興味を示してきた。 MotoGPの空力面でのブレイクスルーを目指すならば、アストンマーティンとの関係を活かしてニューウェイにアドバイスを求めてはどうか? そう渡辺社長に尋ねると、「いいかもしれない!」と語った。 「彼ならばそれこそ、色々な視点が出てくると思います。面白いかもしれないですね」
田中健一