景況感は大幅悪化したが……日銀短観4つのポイント
日本銀行が1日に発表した3月の全国企業短期経済観測調査(短観)は、大企業・製造業の業況判断指数(DI)が昨年12月の前回調査から大幅に悪化しました。世界経済の減速が懸念される中で、この結果をどうみればいいのか。第一生命経済研究所の藤代宏一主任エコノミストが4つのポイントを整理します。
(1)大企業・製造業の業況判断DI
日銀短観(3月調査)によると、大企業・製造業の業況判断DIは「最近の景気が良い」が+12と12月調査から7ポイント悪化して2017年3月調査以来の低水準となりました。マイナス圏まで距離があり、2016年水準を依然上回っているとはいえ、この1~3月期に景気拡大の流れが途切れつつあることを印象付ける結果です。素材型(+15→+8)、加工型(+21→+13)が双方とも弱く、業種別では非鉄金属(+12→▲9)、はん用機械(+47→+20)、生産用機械(+40→+31)、電気機械(+21→+9)などが大幅に悪化しました。
(2)雇用・設備DI
他方、2019年度の設備投資計画は予想外に持ち堪えました。大企業全産業の計画は前年度比+1.2%と、新年度の計画が決まっていない3月の段階としては堅調です。足もとの景気減速にもかかわらず、企業の投資スタンスはさほど慎重化していないようです。それに符号するように生産・営業用設備判断DI(▲5)と雇用人員判断DI(▲35)はマイナス圏横ばいでした(それぞれマイナスは「不足」の意味。全規模・全産業ベース)。
(3)貸出態度判断DI
金融緩和の副作用の観点から注目される貸出態度判断DI(全規模・全産業)は+24と前回調査対比で横ばいでした。大企業、中堅企業、中小企業がいずれも高水準を維持。金融緩和の副作用を懸念する議論では、銀行収益圧迫が貸し出しに悪影響を与えるとの指摘がありますが、この指標を見る限り、貸し出しが抑制されている様子は窺えません。資金の借り手である事業法人は、貸出市場へのアクセスが容易であると認識しています。こうした緩和的な金融環境は、企業倒産の抑制を通じて失業率を低下させ、最終的に物価上昇圧力へと成り代わります。