今しか見れない! 比叡山延暦寺「秘仏」特別公開、仏の世界を最新デジタル再現した夢幻の境地【写真多数】
● 「東塔」と改修風景が観覧可能な「根本中堂」 比叡山延暦寺の中心となるのが、発祥の地である「東塔」。延暦寺全体の総本堂でもある本堂の根本中堂(国宝)をはじめ、大講堂(重要文化財)、法華総持院東塔など重要な堂塔が集まるエリアです。根本中堂は60年ぶりに、2027年12月までの予定で10年間に及ぶ大改修中で、主に屋根のふき替えと塗装の塗り直しが行われています。 根本中堂は素屋根に覆われていますが、中陣から最澄自ら刻んだ御本尊の薬師如来像(秘仏)がいらっしゃる内陣を、従来の趣そのままに拝むことができます。中陣では、袈裟(けさ)を身に着けた僧侶が「比叡山だけに、ひえ~(冷え)ますね」とほほ笑みながら、参拝に訪れた人たちに向け、堂内の見どころを分かりやすく解説してくださいました。 御本尊がいらっしゃる須弥壇(しゅみだん)の前には、開創以来1200年間消えることなく輝き続ける「不滅の法灯」も。冬にも凍らないなたね油を使用しているのだそうで、「油断大敵」の語源になったのだとか。 また、参拝者が御本尊を拝む場所(中陣と外陣)よりも、2mほど低くしつらえた土間に内陣があるのは、仏様や法灯と参拝者との目の高さを合わせるため。このような考え方に基づいて内陣を低く、外陣を高く建てた天台宗の建築を一般的に「天台様式」といいます。「仏も人も一つ」という「仏凡一如」という仏教の考えによるものです。 御本尊に手を合わせたら、ぜひ「修学ステージ」から修復の様子を観覧してください。鳥になった気分で上から俯瞰できる、今だけの貴重な機会なのです。ヒノキ科のサワラ材から作られた栩(とち)葺板(ふきいた)が竹釘で打ち付けられ、整然と並ぶ屋根を見下ろしながら、1200年の伝統を支える職人技を垣間見ることができます。「根本中堂が改修中だから」と、堂内の拝観を見送るのはもったいない!
● 「東塔」で手に入れたい「御納経帳」と限定の「お守り」 根本中堂前の石段を上がって右手、大日如来を御本尊とする大講堂は、4年に一度の「法華大会広学竪義」をはじめ、経典の論議や法会を行う道場。伝教大師最澄から始まる歴代の高僧、桓武天皇、聖徳太子、各宗派の祖師像が安置されています。堂内の一角には、多彩なデザインの御納経帳(御朱印帳)やお守りが並んでいるので、要チェック。大講堂限定の「五角厄除守」は白と黒の2種がそろいます。 東塔エリアの南西端には、伝教大師最澄が計画し、慈覚大師円仁が天台密教の根本道場として創建した法華総持院の東塔と、ご先祖様を供養する滅罪回向の阿弥陀堂が並び立ちます。その他、伝教大師最澄が初めて比叡山に登った際、大黒天に出会ったという逸話を伝える大黒堂も。こちらは三面出世大黒天が御本尊で、羽柴(豊臣)秀吉が参拝に訪れ、天下統一を果たしたことから、「出世」の名が付きます。また、学問の仏様として信仰される「知恵の文殊菩薩」を楼上に安置した文殊楼(重要文化財)の美麗な建築も必見。最後にご紹介する延暦寺会館も東塔にあります。 冒頭でご紹介したように、国宝殿では世界遺産登録30周年記念特別展「比叡山と平安京」が12月1日まで開かれています。比叡山延暦寺から京都や滋賀の寺院に受け継がれた文化財まで一堂に会します。唐の天台山巡礼の足跡を伝える一級史料「伝教大師入唐牒(にっとうちょう)」など伝教大師最澄真筆の巻物や、平安の三筆として名高い嵯峨天皇筆「光定戒牒(こうじょうかいちょう)」、千年ぶりに京都の大雲寺から比叡山に戻ってきた梵鐘といった国宝や重要文化財の数々を目にすることができるチャンスです。