沖縄の洞窟で見つかる古代人の頭蓋骨・手足の骨・・・ なぜ朽ちずに残るのか
沖縄の洞窟のあちらこちらで、骨が見つかります。沖縄戦の遺骨ではなく、数千年前の先史時代の人骨です。RBCは3年にわたり、この発掘調査に独占密着。取材は、古代からのタイムカプセルを開けるような瞬間の連続でした。 沖縄の洞窟で見つかる古代人の頭蓋骨・手足の骨・・・ なぜ朽ちずに残るのか とある日のうるま市・伊計島。 考古学者・山﨑真治 「きょうが初日です。きょうからこちらの調査を始めて、ひっそりと人知れず洞窟があるので、その場所にいってどんなものがあるのか見てみたい」 畑と隣接した雑木林に入っていくと、洞くつがあります。 「すげぇでかい。ヤシガニが住んでいる洞くつなんですか。あっゲジゲジがいた。これ気を付けて、刺されると毒です。こっちきた!」 ヤシガニが住む洞くつの中には、沖縄戦で避難壕に使われていたと思われる痕跡が、ありました。 「こういうところは黒くなっているのがわかりますかね。木炭の欠片が散らばっていて、おそらくこの辺で火を焚いているんだと思う。戦時中のことだと思いますけど恐らく」 山﨑は、ここが、先史時代の遺跡の可能性があると、みていました。ひとり、黙々と、測量をしていきます。杭を打ち、発掘場所を定めると、しずかに、掘り始めました。山﨑たちのチームは、南城市のサキタリ洞で、世界最古・2万3000年前の貝でできた釣り針を発掘するなど、沖縄の旧石器時代の人々の暮らしぶりに迫る成果を次々とあげてきています。 「サキタリ洞もね、昔からあそこが遺跡だというのは知られていた場所だったけれども、やっぱり細かい調査をしてみないと遺跡の本当の重要性ってのは分からないんですよね」 旧石器時代の古い人骨がいくつも出土する場所は、日本で唯一、沖縄だけです。酸性土壌で覆われた日本本土では骨が溶けてしまいますが、沖縄の琉球石灰岩は、骨が溶けにくい弱アルカリ性です。このため、日本本土ではほぼ見つからない、古い時代の人骨が沖縄では極めて保存状態のよい姿でみつかるのです。伊計島の調査開始から1か月。平たい石の下で、人骨が出ました。 「分かります?ここに貝があって、向こうに続いているんですけど、ほら貝。そしてここに石があるでしょ」「この石の下に、細長いものが見えています。これは恐らく骨ですね。ヒューマンボーン(人骨)」「あ、ホントだ。隣にもあるね。すげぇすげぇ」 骨の近くに、ホラ貝がありました。ホラ貝は、3000年ほど前の人の墓で見つかります。葬送品として遺体の近くに置く風習があったからです。また、この洞くつのすぐ近くには、貝塚時代の竪穴式住居の跡、仲原遺跡がありました。 「いや、素晴らしい。大発見じゃないですか。仲原遺跡の時代が3000年前なので、3000年前くらいの年代が出ればそういう時代のものであると、要するにセットで考えられるのは非常に大事だと思いますので」 詳しい調査に進みたいところですが、1か月の調査期間は、翌日が最終日。さらなる調査は、次年度の予算がおりるまで、お預けとなりました。 Q:人骨が見つかった。延長しないのか? 「みなさんの仕事もそうでしょ。オレの番組作りたいからあと2週間延長してロケって出来ないでしょ。そんな感じ。世の中みんな制約のなかで仕事をしているので」 「沖縄の旧石器時代の歴史は謎だらけで、こういう場所ではたぶんサキタリ洞とは違う暮らしをしていたんじゃないかと思う。また違った暮らしがあったんじゃないかと思うので、少しずつ古代のロマンや人類のルーツを明らかにできるといいな」 沖縄の洞くつを掘り続けている山崎が、今、もっとも惹かれている洞窟が、沖縄本島北部の、とある場所にあります。 「気を付けて、滑りますから!」 「鍾乳石に覆われていて…こんな人骨は見た事がない」 「沖縄の人たちのルーツや日本列島人のルーツに迫る、大変重要な手がかりになる」 先史時代の骨を保存してきた沖縄の洞窟のポテンシャルは、伊計島の事例をみるだけでもその凄さが分かりますが、この本島の洞窟からは、さらにとんでもない人骨が見つかりました。遺跡の保存の観点から、まだ場所を明かすことはできませんが、この洞窟では、鍾乳石に覆われた謎の全身骨格が横たわっていたのです。この人骨は、いったいいつの時代の、誰なのか。謎を解き明かす調査が進んでいます。