「ウクライナ連邦」化はロシアと欧米の落とし所になるか
4月13日、分離独立運動が高まっていたウクライナ東部のドネツク州で、武装したロシア系住民と治安部隊が衝突。この状況に対してロシア政府は、ウクライナ暫定政権や治安部隊を批判しながらも、ドネツクの編入を否定。その上で、ウクライナへの連邦制の導入を提案しています。連邦制から、ウクライナ情勢を考えます。 【動画】歴史は繰り返す? 「クリミア戦争」とは
クリミアのロシア編入後のウクライナ
ロシアがクリミア編入を宣言した3月18日の前後から、ドネツク州やハリコフ州などでは、ロシア系住民と警察の衝突が散発的に発生。これらの地域はロシア系住民が多く、親欧米派が占める暫定政権への反感が強い点で、クリミアと共通します。 このうち、ドネツクでは州庁舎などをデモ隊が占拠。4月7日には「ドネツク人民共和国」としての独立を一方的に宣言し、さらに5月11日までに独立の賛否を問う住民投票を実施する予定が発表されました。 これに対してウクライナ暫定政権は、デモ隊に退去を要求。しかし、デモ隊は暫定政権が強硬手段に出ればロシアに救援を依頼する姿勢を示し、これを受けて約4万人のロシア軍がウクライナとの国境付近に展開。そんななか、ドネツク州スラビャンスクで、警察署を占拠していた武装組織とウクライナ治安部隊の衝突に至ったのです。
「連邦制」がもつ効果
州庁舎などの占拠が始まって以来、欧米各国政府は「ロシアが武装組織やデモ隊を扇動している」と批判してきました。一方、ロシアのラブロフ外相は4月11日、これを否定したうえで「ウクライナ領のさらなる編入はない」と明言。そのうえで、ウクライナへの連邦制の導入を提案してきました。 連邦制には、どんな意味があるのでしょうか。国によって差はありますが、多くの連邦制国家では州政府に、外交、国防、通貨発行などを除いて、教育など公共サービスや徴税で強い権限が与えられています。 一方で、連邦制には文化的な違いを政治的な対立に発展させにくくするメリットがあります。数多くの民族、言語、宗教を抱える国では、中央政府が特定のグループに握られた場合、公用語の指定などで少数派が不満を募らせやすくなります。地域ごとに高い独立性を保つことができる連邦制には、このような不満や対立を和らげる効果があり、ロシアや米国の他、ドイツ、ベルギー、スイスなど、ヨーロッパでも広く採用されています。 連邦制の導入には、ウクライナでの混乱の背景にある、民族間の対立を抑える効果が期待されるのです。