松下幸之助から毎日電話が...「経理から工場長に」異例の人事がもたらした活躍の道
人生100年時代を生きるビジネスパーソンは、ロールモデルのない働き方や生き方を求められ、様々な悩みや不安を抱えている。 【写真】整列する社員に声を掛ける松下幸之助 本記事では、激動の時代を生き抜くヒントとして、松下幸之助の言葉から、その思考に迫る。グローバル企業パナソニックを一代で築き上げた敏腕経営者の生き方、考え方とは? 【松下幸之助(まつしたこうのすけ)】 1894年生まれ。9歳で商売の世界に入り、苦労を重ね、パナソニック(旧松下電器産業)グループを創業する。1946年、PHP研究所を創設。89年、94歳で没。 ※本稿は、『THE21』2023年2月号に掲載された「松下幸之助の順境よし、逆境さらによし~与えられた環境に没入し、精進努力する。大きな安心感がわき、力強い働きが生まれる。」を一部編集したものです。
会社主導型のキャリア形成だからこそ
最近は、社員の希望を配慮することなく配属や異動を命じる企業は少なくなった。むしろ、社員のキャリア形成支援に力を入れる企業が増えているという。 しかし、会社主導型のキャリア形成も一概に悪いとはいえない。配属や異動によって、経験したことのない仕事ができたり、まったくの異分野で新たな人脈ができたりするからだ。 松下幸之助も、社員はまずは与えられた仕事に注力すべきだと説いた。それは社員を使う経営者の立場にいるからではなく、自身についてもずっとそうだったからだと言うのだ。 若くして独立したのは、積極的にそうしようと考えたのではなく、そのときの個人的事情や時代背景によるものであり、以降も置かれた境遇のもとで懸命に努力をしてきたにすぎないと述べている。 また、そのような自身の経験から、自分の意志で道をひらこうとすると、煩悶や動揺に苦しむことが多いものの、「素直に与えられた環境に没入し、精進努力してゆく。そういうところに大きな安心感もわき、より力強い働きも生まれてくる」(『思うまま』PHP研究所)と強調している。