「親が宿題を代行」したのに先生が怒らなかった納得の理由 教育現場は「正論」しか選択してはいけないのか
■教育をよくするのは専門家ではない 昔の日本では、先生がたも、友人の親御さんも、みんなが私たち<子ども>のことを考えてくれていた。いや、子どもだけではなく、母もまた、社会や地域に支えられ、育てられていた。母はそんなみなさんに恩返ししようと必死だった。 『星の王子さま』は火事で燃え、小学校の恩師は鬼籍にいられた。だが、私の心に刻まれたこの温もりは、形はちがっても、子どもたちの心に受け継がれてほしい。
もちろん過去を懐かしむだけではダメだ。昔はよかったでは答えにならない。もっと先に進まなければ。 子どもの権利を守りながら、先生たちが教育に専念できる環境整備を急ぐべきだ。先生の数を増やす。先生たちの学びの機会も増やす。社会の子育てが可能となるような仕組みを地域に落とし込むことだって必要だ。 お金はどこから? 税を払うべきだ。私ならそうしてほしい。人は国の礎。すべての国民が本気で考えるべき、この国の未来の礎のためなのだから。
教育をよくするのは専門家ではない。未来を本気で考える私たちの意志なのだ。
井手 英策 :慶應義塾大学経済学部教授