このままでは卵・牛乳も? 米国「鳥インフルエンザ」緊急事態、韓国も緊張
22日、京畿道竜仁市処仁区白岩面(キョンギド・ヨンインシ・チョイング・ペガムミョン)。南漢江(ナムハンガン)の支流である清渼川(チョンミチョン)沿いの農道に入ると「立ち入り禁止。渡鳥の飛来地AI検出地域です」と書かれた黄色の横断幕が現れた。高病原性鳥インフルエンザ(AI)ウイルスであるH5N1が検出され、環境当局と地方自治体が設定した統制区間だ。 AI予察員2人が望遠鏡を持って回り、特異事項がないかどうか確認した。AI予察員のイ・ミョンラン氏は「AIに感染した鳥類の死骸があれば回収しなければならない。他の動物が捕食すればAI感染が起きることがあるため」と説明した。 17日、ここでは体力の衰えた状態のオシドリ1羽が捕獲された。精密診断の結果、H5N1が検出された。H5N1は現在全世界で最も多いAI感染を引き起こしている亜型(subtype)だ。鳥類を越えて哺乳類、ヒトにも感染し、国内外の専門家を緊張させている。 この日もオシドリの一群が群れをなして飛んでいく様子が捉えられた。オシドリが飛んで行った北側300メートル先には100羽を越える渡り鳥が群れをなして休んでいた。カルガモ120羽、マガモ10羽、オシドリ20羽余りだ。このうちAI保菌個体があれば、集団内感染はもちろん、鳥たちが捕食活動をする半径10キロメートル内の畜産農場がAI感染にさらされる。 鳥類を研究するソウル大学山林科学部のチェ・チャンヨン教授は「AI流行初期には渡り鳥の大量死があったが、今は抗体を保有していて無症状の感染個体が多い」とし「人間に捕獲されたオシドリは症状が現れたため群れから離れた」と説明した。 地方自治体と畜産農家も緊急事態に陥っている。群山(クンサン)の萬頃江(マンギョンガン)と竜仁の清渼川はAI危機警報が最も高い「深刻」(4段階)に引き上げられた。清渼川に隣接したある畜産農家はこの日ひよこ数千羽にワクチン注射をしていた。匿名を求めた農家の主人は「低病原性AIは予防できるが、高病原性AIには予防ワクチンがない」とし「状況が心配だ」と話した。 ◇鳥類ウイルスなのに、哺乳類→哺乳類感染開始 1996年中国南部のカモ農場で初めて発見された当時、インフルエンザの一類型にすぎなかったH5N1は、最近哺乳類から哺乳類に伝播し始めて、アザラシやキツネ、トラなど種に関係なく感染し、エコシステムを破壊している。世界保健機関(WHO)によると、H5N1は少なくとも485種の鳥類と48種の哺乳類を感染させることができる。 学界を中心にAIパンデミックは時間の問題という警告が出ている。チェ教授は「過去には野生鳥類、家禽類と接触した人間や動物が個別的に感染したが、最近2~3年間で様相が変わり、哺乳類から哺乳類に感染し始めたという点で深刻性が強まった」とし「しかも気候変動で棲息地が消失したことで種間接触余地も広がりウイルスの進化がとめられない状況」と説明した。 ここにヒト感染事例まで報告されて不安はさらに高まっている。今春、米国テキサス州の乳牛農場で農場労働者がAIに感染したのはウイルスが乳牛の間で流行してヒトに感染した初の事例だった。米疾病対策センター(CDC)のロバート・レッドフィールド元局長も「(AIパンデミックが)いつ起きるかの問題」と話した。 秋に入ってカリフォルニア州では今月だけで酪農業従事者11人が感染し、ワシントン州でも先週家禽類農場労働者3人が推定感染して疫学調査を受けているところだ。間もなく季節インフルエンザの流行時期を迎え、当局のAI感染経路の追跡が難しくなり、ウイルスがさらに進化しやすい環境になるだろうという懸念も出ている。 ◇「人類家畜システムがウイルス進化させる」 まだ韓国ではヒトへの感染事例は報告されていないが不吉な兆しが現れている。5月カモ農場でAIが検出されたことも例外的な時期であり、9日萬頃江で検出されたH5N3は昨年の時点では低病原性だったのに今年は高病原性であることが確認された。 チェ教授は、もともと野生鳥類は低病原性鳥インフルエンザウイルスを保有しているが、人類の家畜システムによってウイルスが高病原性に進化し、種間移動まで起きるような環境を作っている」とし「このような過程を繰り返して、卵や牛乳、肉を通じてもウイルスが移動してすべての人間が被害を受ける可能性がある」と懸念した。