【インタビュー】ソフトバンク・倉野信次(投手コーチ) V陰の立役者に聞く「本来選手が持っている力を最大限発揮できるような環境をつくること」
数字に表れない部分
倉野信次[投手コーチ[チーフ]兼ヘッドコーディネーター[投手]]
優勝が決まった9月23日時点で、チーム防御率2.53と同打率.259はいずれもリーグトップ。前評判どおりの爆発力を見せた打線に対しては驚きはないが、先発陣もリリーフ陣も、ともに安定感を発揮して投手陣は現チームの“強み”にまでなれたのは、決して選手たちだけの力ではない。小久保裕紀監督とともに就任1年目で結果は残した。あとは今のいい流れを、どう今後につなげていくか、だ。 取材・文=菅原梨恵 写真=井田新輔、BBM 2年間のアメリカ、マイナー・リーグでのコーチ経験を経て、古巣のために戻ってきた。投手陣の中でも特に先発陣の整備は、一軍監督に就任した小久保裕紀監督も「一番の課題」に挙げる“超重要案件”。再建は、倉野信次投手コーチ(チーム)兼ヘッドコーディネーター(投手)(以下、投手コーチ)の手腕に託された。そして、それから1年もたたず──。4年ぶりにパ・リーグの頂点に立ったチームは、しっかりと試合をつくれる先発陣と、より安定感が増したリリーフ陣によって支えられている。ここまでに至る第一歩として、倉野投手コーチが最初に着手したのは、リリーフ陣へのアプローチだった。 今季を迎えるにあたっても、リリーフはある程度、計算できるかなというふうには思っていました。そのリリーフ陣に“いかに状態をキープさせられるか”ということを、まず一つ考えたんです。そこが前提というか。リリーフが崩れてしまうと、すべてが崩れてしまう。なので、大課題の先発の前に、前提としてリリーフ陣がしっかりと働ける、役割を果たせて状態をずっと維持できる、ということを最優先にしました。 一番は『いかに蓄積疲労をさせないか』ということ。ブルペンで(肩を)つくる回数を極力減らすために、あらかじめ試合前、練習中に自分が出るシチュエーションというのを、それぞれに伝えることに決めました。もちろん100%ではありませんが、ある程度「こういうふうな展開になったら行くよ」というのを、それぞれに伝えておく。それによって、心の準備、体の準備というものが、少なくて済むわけです。また、それぞれの役割分担をこれまでよりも細かく選手たちに伝えることで、ブルペンでつくる回数というのは圧倒的に減りました。 その上でようやく先発陣。ここではまず、昨季の成績を分析するところからのスタートでした。優勝したオリックスがシーズン86勝、阪神が同85勝を挙げていたのですが、主要の先発陣で大体60勝ぐらいしていたんですよ。残りの20勝ぐらいを中継ぎがしているというのが現状で、ホークスも中継ぎでは20勝ぐらいしていた。ということは、「明らかに先発が勝てていない」ということ。60勝するためには、誰がどのぐらい勝たないといけないのかという計算をしていきました。名前は言えないですが、“○○”と“●●”で何勝、“□□”と“■■”で何勝、というようなシミュレーションをどんどんとしていったんです。 結果的に見れば、計算どおりにいった部分もあるし、いかなかった部分もあります。いい誤算もあれば、本当の誤算もあって・・・
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週刊ベースボール