「その魚、本当に国産ですか?」食べて守る海の基本知識[教えて!井植美奈子さん]
寿司、煮付け、干物。日本では日常的に魚を食べる習慣があるが、その多くは、日本近海で獲られた国産だろうか? 答えはNO。日本の食卓に並ぶ魚の約50%は輸入に頼っている。 ▶︎すべての写真を見る
いきなりショッキングな事実を知ったところで、セイラーズフォーザシー日本支局の理事長を務める井植美奈子さんに話を聞こう。
日本の食卓に並ぶ魚の半分以上は外国産である事実
水産資源が豊富であるはずの日本において、みんなが食べる魚介の約50%が輸入に頼っているというのはどういうことか。 井植さんはその原因のひとつに、近海の環境の変化と漁業スタイルなどに原因があると指摘する。
「日本の大半の漁師は近場で漁を行う沿岸漁業者です。長年の乱獲や、気候変動による海水温の上昇などで、磯焼けや環境の変化が起こり、魚が住めなくなり、漁獲量が減るという事態に直面しています」。(井植さん。以下すべて) 海洋保全という視点から考えると、管理漁業下に置く魚種の数、輸入されてくる魚介が獲られた人的・水産的環境についてもチェックすることが必要だ。
世界に追いつけ、日本の管理漁業は始まったばかり
日本の管理漁業は、改正漁業法が2018年に成立、2020年施行したことでスタートした。それに続いて2020年に成立、2022年に施行された水産流通適正化法では、漁獲証明書の添付を義務付ける制度が開始された。
ただし、漁獲証明対象魚種は国内産3種(アワビ、ナマコ、シラスウナギ)と、輸入魚4種(イカ、イワシ、サバ、サンマ)のみ。 今後、この対象魚種を欧米並みに増やしていかなければならない。さもなくば、違法性の高い水産物が、漁獲証明書がいらないことを良いことに、管理の甘い日本へ次々に流入してしまう。 「ヨーロッパでは、全魚種が漁獲証明制度の対象です。アメリカでは主要13種が義務化されていて、現在は、全魚種の義務化が下院を通過しました。それに比べると日本の現在の対象魚種が7種は少なすぎます」。
しかも日本人が好むサーモンやマグロ、カツオ、ハマチといったツナ類がごっそりと抜け落ちている。 「アワビやシラスウナギなどの高級魚種は密輸・密売を防ぐ意味はあるものの、日常的に食べるものではありませんよね。なので管理漁業のインパクトとしては小さい。そこが今後の課題です。 また、今は対象外のサーモンやエビなどは主に輸入に頼っていますから、それらの漁獲証明書の添付が義務付けられれば、漁業の透明性と製品の安心が得られます」。 ここには、現代の大きな避けて通れない問題も潜んでいる。モダン・スレイブリー(現代的奴隷制)と言われる非人道的な漁の実態だ。