三陽商会の“100年コート”に異変 ショート丈が定番トレンチの「2倍」売れている
三陽商会「サンヨーコート(SANYO COAT)」の“100年コート”といえば、重厚で本格的なトレンチコートだ。だがこの秋は、気温がなかなか低下しない中で、9月に発売した新作のショート丈モデル(9万9000円)の動きがいい。ブランドの顔であるロング丈のトレンチコートを押し除ける売れ行きを見せている。
“100年コート”は同ブランドが2013年から展開。トレンチとバルマカーンコートという普遍的なスタイルに重きを置き、表地は高品質なギザコットンのギャバジン素材で、耐久はっ水機能がある。生地調達から縫製まで全ての製造プロセスを国内で完結。55年間コートを作り続けている日本でも珍しい自社運営のコート専業工場「サンヨーソーイング 青森ファクトリー(青森県七戸町)」で縫製している。 新作のショート丈モデルは、“100年コート”の本格的なディテール、生産背景を踏襲。ただしライナー無しの仕様にして、寒くなる前の時期から着用できるよう軽やかに仕上げた。Mサイズは女性、Lサイズは男性の着用に対応する。また、“100年コート”は購入後に点検と補修のアフターサービス(一部有料)を提供しているが、ショート丈モデルでもこの恩恵を受けられる。
発売から2カ月で、ロング丈の定番トレンチコートと比べ数量ベースで「2倍程度の売れ行き」(担当者)という。狙いだった暖冬ニーズを捉えていることに加え、「ブランドの顧客にはお年を召した方もいらっしゃり、『小柄なためロング丈ではバランスがとりづらい』『重くて肩が凝る』という理由で敬遠されていた方にも響いている」という。また、ロング丈より2万円程度価格が安いことも購入を後押ししている。
三陽商会は24年秋冬、暖冬傾向を見据えた商品開発・販売計画を推進し、コートをはじめとする重衣料の展開時期とバリエーションの見直しを進めている。全社でのコートの生産数を減らす一方、本格的な寒さでなくても着用できるショート丈のコート・アウターについては、生産数を前年に対し約1.5倍に増やしている。
「サンヨーコート」の25年春夏は、“100年コート”シリーズの新作としてロングジレ(9万9000円)、やウォッシュ加工のショート丈トレンチコート(同)をラインアップに追加。重ね着や高気温に対応できるアウターバリエーションをさらに拡充するとともに、“100年コート”の生地を使ったバッグや帽子など気温に販売動向が左右されづらい雑貨類も強化する。