コロナ特例貸付で対象外の生保受給者に14億円 厚労省は全件調査へ
会計検査院は22日、一部自治体を対象にした新型コロナに伴う生活福祉資金の特例貸付に関する調査結果を公表し、本来対象とならない生活保護受給者への貸し付けが14億円に上ることが分かった。原因については、厚生労働省が都道府県に保護受給の具体的な確認方法を示していなかった点を指摘。これを受け、厚労省は今後、すべての特例貸付で保護受給者がいなかったかを検証する方針だ。 新型コロナにより収入が減った世帯への支援策として政府は、都道府県社会福祉協議会が実施主体である生活福祉資金に特例措置を設けて対応。2020年3月~22年9月の期間中決定件数は382万件、総額1兆4431億円に上った。 その際、厚労省は迅速に送金するため、通常貸付では求められる面談や支援計画作成を不要とするなど条件を大幅に緩和した。ただ、保護受給者はすでに最低限度の生活が保障されていることから対象外とし、特例貸付の申込書には生活保護を受給していないことを確認するための本人チェック欄が設けられた。 今回、会計検査院は全国17都府県社協が貸し付けた219万4526件・8242億円について調査を実施。その結果、16都府県社協において、4428件・14億3620万円が保護受給者に貸し付けられていた。 原因について会計検査院は、厚労省が都道府県に申請者が保護受給者か否かを確認する方法を具体的に示していなかった点を指摘。その上で、事後確認を適切に行う必要があるとの見解を示した。 これを受け、厚労省は9月、都道府県に対し、すべての特例貸付について保護受給者がいないか確認するよう求める事務連絡を出した。特例貸付を受けた保護受給者が福祉事務所に未申告だった場合、適切に対応するよう要請。その結果、不正受給と認定されると、保護費から返還を求められる可能性がある。 ■全社協・池上実事務局長の話 全国の社協における通常貸付は年約2万件。今回の特例貸付では約100倍規模の相談や申請を受ける中、保護受給者かを確認することはきわめて困難だった。当時政府からは、一刻も早い送金が求められていた。慎重な取り扱いが求められる行政保有の保護受給者の情報を社協が確認するには時間も必要で、当時は本人の自己申告に基づき判断するしかなかった。今後は必要な調査への協力とともに、貸付者のフォローアップ支援についても進めたい。