【宝塚記念/記者の特注馬】聞き捨てならない指揮官の言葉 〝紅一点〟ルージュエヴァイユが淀で輝く
[GⅠ宝塚記念=2024年6月23日(日曜)3歳上、京都競馬場・芝外2200メートル] 【トレセン発秘話】宝塚記念といえば「牝馬が強い」。これはもはや定説になりつつあり、昨年はスルーセブンシーズが10番人気で2着、16年にはマリアライトが勝利し、15年にはデニムアンドルビー(10番人気)、ショウナンパンドラ(11番人気)が揃って2、3着に好走するなど、人気の有無に関係なく大活躍。今年、〝紅一点〟として挑むルージュエヴァイユにはがぜん、注目が集まることでしょう。 私が初めて美浦トレセンに来たのが3か月前の大阪杯当週。そこで黒岩厩舎担当の任務を賜り、翌週から取材が始まりました。黒岩厩舎から、その大阪杯にルージュエヴァイユ、さらには翌週の桜花賞にアスコリピチェーノが出走を控えていましたが、ともに栗東滞在で美浦には不在。後者はその後、NHKマイルCで取材することができましたが、前者は今回の宝塚記念が私自身、初取材となります。 取材を進める中で珍しいと感じたのが、黒岩調教師が語る、ルージュエヴァイユの「精神面の強さ」。牝馬は繊細というイメージが強いだけに、詳しくうかがうと「精神力が強くて、初の競馬場だったり、輸送、環境の変化もこなしてくれます」。近3走、いずれも関西圏で競馬をしており、「太め残り」と敗因を挙げた京都記念(8着)以外の2走は、エリザベス女王杯2着、大阪杯3着とGⅠでいずれも好走。特に前走・大阪杯はクビ+ハナの小差で、GⅠ制覇まであと少しのところまで来ているのは、精神面の強さが生かされているのでしょう。
例年とは違う京都開催も追い風に
また、今年の宝塚記念を語る上で外せないのはやはり〝淀開催〟という点。従来の阪神開催では「内回り・直線急坂」の条件でしたが、京都開催の今年は「外回り・直線平坦」と条件が一転します。古くから〝京都巧者〟と呼ばれる馬が多数出ている舞台とあって、適性が特に重要なコースと言えるでしょう。エリザベス女王杯2着とすでにコース実績がある上で、改めて黒岩調教師は「力を出せるコースなので、力のあるこの馬にとっては適性があるコースです」と自信の一言。サラッと出た言葉でしたが、この馬への評価の高さがうかがえる、何よりの褒め言葉だと感じました。「以前は苦しくなるとモタれるところがありましたが、今は問題ありません」と話すように、その成長力もすさまじいものがあります。 近年ではリスグラシューやクロノジェネシスなど、勢いに乗った牝馬がそのまま宝塚記念も制し、のちにさらなる躍進を遂げています。「今までも状態に伴う結果が出ていて、今回も状態はいいので結果が出ることを期待しています」と闘志を燃やす黒岩調教師の言葉通り、成長著しいルージュエヴァイユも素晴らしい走りを見せ、過去の名牝になぞらえる飛躍を遂げてほしいと思います。
大坂 寅生