平均宿泊数が東京・大阪・京都に及ばず「観光は点より線、周遊性向上を」…兵庫県政の課題
姫路城「収益が訪れる観光客数に見合わない」
兵庫県姫路市の世界遺産・姫路城の前にある大型駐車場。観光バスがひっきりなしに出入りし、降りた団体客らはそのまま大手門に吸い込まれていく。 【写真】行楽シーズンを迎え、インバウンドらでにぎわう姫路城(兵庫県姫路市で)
秋の行楽シーズンを迎え、周辺はインバウンド(訪日外国人)を含む大勢の観光客らでにぎわっていた。昨年度、市内を訪れた観光客は推計941万7000人で、コロナ禍前の水準を超えた。地元の期待は高まるが、今後への課題は残されている。
「外国の人は30ドル払ってもらい、市民は5ドルくらいにしたい」――。今年6月、同市の国際会議で清元秀泰市長が披露した「腹案」が、思わぬ波紋を広げた。値上げ分を城の維持管理費に充てる思惑だったが、二重価格には賛成とともに「外国人差別だ」など多くの批判が上がり、外国人をターゲットにした案は事実上の撤回に追い込まれた。
「収益が、訪れる観光客数に見合わない」との考えが市側にはある。昨年度の入場者数は150万人近くで、うちインバウンドは過去最多の45万人に上った。江戸時代の約260年を通じても、これだけの登城者はなかった。
昨年度、市が城などを訪れた日本人観光客延べ1368人を対象に実施した動向調査では、約8割が「日帰り」と回答。市内での飲食費も、2000~5000円が4割あまりに上った。
姫路観光コンベンションビューローは3月にまとめた基本計画で▽観光客の滞在時間が短く、市内での消費が低い▽観光拠点間の交通網が不足し、回遊性が低い――ことなどを課題として挙げた。これは県全体の視座にも当てはまる。
宿泊客数は全国順位で健闘するも…
観光庁によると、昨年県内で宿泊した観光客は延べ1513万1440人。有馬(神戸市)や城崎(兵庫県豊岡市)などの温泉地を抱え、全国12位と健闘している。
ただ、県が注視するのは、1人が県内で何泊したかを示す平均宿泊数だ。日本交通公社による昨年の統計では、県内を訪れた観光客の平均宿泊数は1・29泊。リゾート地として有名な北海道(2・16)や東京(1・7)、大阪(1・54)、京都(1・6)、福岡(1・49)などに及ばない。