【ライブレポート】奥田民生ソロ30周年記念でGOZ復活!骨太なアンサンブルが国技館を揺らす
奥田民生のソロ30周年記念ライブ「59-60」が10月26、27日に東京・両国国技館で行われた。このうち初日公演は「ひとり股旅スペシャル@両国国技館」と題した弾き語りライブとして、2日目は「GOZ LIVE AT RYOGOKU KOKUGIKAN」のタイトルでバンドセットのライブとして実施。この記事では27日に行われた2日目公演の模様をレポートする。 【写真】ギターをかき鳴らし熱唱する奥田民生 ■ 約20年ぶりに復活したGOZ GOZはソロ本格始動当時の奥田と活動をともにしていたバンドの名称で、奥田(Vo, G)、古田たかし(Dr)、根岸孝旨(B)、長田進(G)、斎藤有太(Key)からなる5人編成。初期のライブやレコーディングの多くがこのメンバーで行われていたほか、奥田がプロデュースを務めたPUFFYのバックバンドとしても活躍した。斎藤は現在の奥田のバンド・MTR&Yのメンバーでもあり、古田も折に触れて奥田との共演機会はあるものの、GOZとして5人が一堂に会するライブは約20年ぶりとなる。この貴重な機会を見逃すまいと、両国には多数の熱心なファンが詰めかけた。 開演時刻を迎え、場内にヴァン・マッコイ「The Hustle」がオープニングSEとして響きわたると、薄暗い舞台上にGOZのメンバーが1人ずつ姿を現して持ち場にスタンバイ。客席からは「待ってました」とばかりに拍手と歓声が飛び、ややあって古田が勢いよく4カウントを打ち鳴らすと、ステージが真っ赤な照明で煌々と照らされた。重厚なバンドアンサンブルとともに奥田のレスポールが不穏なディミニッシュコードを轟かせ、1stソロアルバム「29」収録のギターロックナンバー「ルート2」でライブがスタート。古田と根岸の生み出すグルーヴィなリズムはもちろんのこと、とりわけ奥田と長田による特徴的なツインギターサウンドがGOZライブならではの独特の手触りをもたらす。ギター1人体制のMTR&Yとは大きく味わいを異にする要素として聴衆の耳を奪い、国技館のボルテージは一気に最高潮にまで到達。早くも感極まる様子の観客も散見された。 ■ もういろいろ忘れちゃって…… その勢いのまま、バンドはハードなシャッフルナンバー「彼が泣く」、斎藤のムーグがうなりを上げる「ときめきファンタジーIII」を続けざまに投下。サイケ色の強い楽曲を畳みかけて緊迫感あふれるムードで会場を満たしたかと思うと、続くMCでは持ち前の脱力感を大いに発揮する。奥田は開口一番「昨日は1人きりで寂しい弾き語りでしたけど」と含みのある物言いで笑いを誘い、「このメンバーでやるのは20年ぶりだそうです。もういろいろ忘れちゃって……(根岸に対して)ミネギシさんでしたっけ?」などの軽口も交えながらメンバーを1人ずつ紹介。ひさびさの再集結にあたって真面目にリハーサルを行ったことを誇らしげにアピールしたのち、「今日はどこまでいけるか、よろしくお願いしますね」とオーディエンスに呼びかけた。 続いてポップな色合いの濃い「夕陽ヶ丘のサンセット」、GOZでは初めて演奏される「風は西から」、シングルのカップリング曲ながらファン人気の高い「メリハリ鳥」といった楽曲群を次々に披露。そして「30年いろんな曲を作ってきたけど、思えば最近やってない曲がいっぱいある。『別にやってもいいけど』っていうのと、『これはちょっとできないな』っていうのが……できないっていうか、『キャラ違ってない?』みたいなのがあるでしょ。次はそういう曲です(笑)」と前置きして「トリコになりました」を繰り出す。リッケンバッカーとバイオリンベースが織りなすリヴァプール感満載のサウンドや、奥田の曲では近年あまり聴かれなくなった終始キーの高い歌メロ、ファルセットを駆使したコーラスワークなどで観客を熱狂させた。 ■ おなじみのギミックもたっぷり投入 さらに「KING of KIN」の“人力フェードアウト”や「息子」の曲終わりで全員がそろって両手を挙げるポーズなど、当時おなじみだったギミックも惜しみなく投入。奥田によると、そうした“お約束”はリハーサル中に誰かがふと思い出すのだという。そんな仕掛けの数々に加え、「手紙」の長尺アウトロや「The STANDARD」における奥田、根岸、斎藤による三声ハーモニーなど、長いブランクをまるで感じさせない息の合ったパフォーマンスを次々に繰り広げた。また、各曲の終わりでバンドの音を止める合図が根岸の足上げによって行われる光景ももちろん健在だ。 その後もライブはつつがなく進行。根岸いわく「知らない曲です(笑)」という「無限の風」のようなGOZ期以降に発表された楽曲も交えながら、「MANY」や「コーヒー」「恋のかけら」といった人気シングル曲が矢継ぎ早に連ねられていく。セットリストが終盤に差しかかると、「MILLEN BOX」のアウトロにつなげて古田が軽快なディスコビートを刻み始め、「両国ー!」と絶叫してオーディエンスの興奮を煽る。そこから印象的なベースのリックを契機に「御免ライダー」に突入し、根岸のベースソロを交えたディスコロックナンバーで国技館をダンスホールに一変させた。そして奥田が突如として横綱土俵入りを思わせるポーズを無言で披露したかと思うと、おもむろにレスポールスペシャルをかき鳴らし始め、爛々と輝く強烈な目つぶしライトを背にアンセミックなミディアムナンバー「トロフィー」をお見舞い。トドメに奥田の“主題歌”とも言える「CUSTOM」を畳みかけ、怒濤のラストスパートを締めくくった。 ■ 普段通りの姿で20年ぶりステージに幕引き アンコールでは、ヒットシングル曲「マシマロ」をブルース進行のロックンロールにアレンジしたライブ限定曲「マシマロ(ック)」と、「愛のために」の2曲をMCもそこそこに粛々とプレイ。そして演奏が終わると同時に、クロージングSEのルイ・アームストロング「What A Wonderful World」が場内にこだまし始める。さほどアニバーサリー感を強調することもなく、あくまで普段通りの5人の姿のまま、このメモリアルな一夜に淡々と幕を引いた。 なお、奥田はソロ30周年を記念して、ソロ2ndシングル「愛のために」のアナログ盤、書籍「59-60 奥田民生の 仕事/友達/遊びと金/健康/メンタル」、写真集「タミオグラフィー」などさまざまなアイテムをリリース。2025年3月8日にはアナログ&Blu-rayボックス「『記念ライダー30号』 29-30BOXスペシャル」を発表する。 ■ セットリスト □ 奥田民生「GOZ LIVE AT RYOGOKU KOKUGIKAN」2024年10月27日 両国国技館 01. ルート2 02. 彼が泣く 03. ときめきファンタジーIII 04. 夕陽ヶ丘のサンセット 05. 風は西から 06. メリハリ鳥 07. トリコになりました 08. ワインのばか 09. KING of KIN 10. 息子 11. The STANDARD 12. 手紙 13. 無限の風 14. MANY 15. コーヒー 16. 恋のかけら 17. MILLEN BOX 18. 御免ライダー 19. トロフィー 20. CUSTOM <アンコール> 21. マシマロ(ック) 22. 愛のために