【独占】ロッテの大型新人・藤原恭大が開幕直前に語った知られざる苦悩と中日・根尾へのメッセージ
ーープロへの対応。ここまで何をどう変えた? そう聞くと藤原は「細かく言えば長くなりますよ」と笑った。 「高校からやっていた打撃フォームが土台としてあって、これは変えていません。でも少しだけ小手先の部分を変えた。小さなルーティンも変えていきました」 藤原のバッティングの原点は回転力である。 「ぱっと回る。コマのように速く回る。僕みたいな体重のない選手は回転力がなかったら飛ばないんです。でも、その回転力が小学校の頃からズバ抜けて強かった。僕なんかそこがなくなれば終わりです」 右足を独特の感覚で長く上げながらタイミングを取って“間”を作るが、そこからインパクトに向け藤原が意識しているのが回転力だ。左利きの左打者の特徴として左手の押し込みが強いが、これも中学、高校と通じて、「左手を使え」、「いや右手を使え」の紆余曲折を経て「今は右手を使っている。でも引き出しとしては(左手の使い方も)ある」という。 だが、プロでは、最初、その回転力を生かす手前でスピードに戸惑った。 「最初は動作を早くしたんです。でも1試合、2試合で変えてしまったものって簡単に崩れるんです。そして結果的に最初のところへ戻った」 それでも「コンパクトに。(フォームを)凝縮した」という。 生活リズムも変えた。朝起きて体調を見てからウォーミングアップの量や、食事時のごはんの量、「何を食べて、何を飲むか」までを細かく変えながら試合のための準備をした。 その理由は、「プロのレベルは少し調子が悪くなっただけでまったく打てなくなり、思ったプレーができなくなる。高校とはまったくレベルが違う」から。 「状態がマックスの状態で打席に立ってもヒット1、2本しか打てないんです」 プロの壁はあまりに大きく立ちはだかっていた。 初めての木製バットにしてもそうだ。 84.5センチの長さのものからスタートしたが、84になり、85になり、現在は、84.5と、85を併用している。重さは880グラムと885グラムだ。バットの形状も何度も変えた。 「振った感触なんですが、ほんのちょっとのことで打てなくなるんです。たとえば振った感覚はよくてもフリーでダメ。振っていい、フリーでもいい、でも試合でダメだったり、逆にフリーでダメだったのに試合でめちゃいい感覚になるバットもあって難しいんです」 繊細な藤原ゆえの苦悩。追求すればするほど出口がわからなくなる。 オープン戦の終盤には、日本球界を代表するナンバーワン投手、巨人の菅野との対戦機会を得た。結果は、二ゴロと見逃し三振。 藤原は「怖かった」と言った。 「菅野さんはコントロールが違う。投げミスが少ないし、まっすぐのキレ、変化球のキレ。全然違います。怖さがあるんです。球種は7種類くらいあって僕には、3種類しか投げなかったけれど、ばんばん決められ、すぐに追い込まれる。あれは打てないです(笑)」 怖さとは三振の恐怖だ。 2打席目は追い込まれてから、ストレートを待っていたが、カーブを使われて反応ができなかった。 「高校時代なら対応できました。でも150キロを超えるプロのボールでは……でも、あの日の菅野さんの調子は良くなかったと思うんです。思い切り投げていないのがわかりました。まだまだレベルが上がってくる。本気の菅野さんを見ていないんです。でも18歳の僕が、こんなに早く菅野さんと勝負させてもらえるとは思ってもみませんでした。ありがたいという言葉に尽きます。でも、いいピッチャーを打てないとプロでは生き残れないんです」 菅野にはプロとは何かを教えられた。