かっこよくて不適切⁉「昭和の復権」を予言していた「クレイジーケンバンド」の凄み
今年放映された宮藤官九郎脚本のテレビドラマ『不適切にもほどがある!』(TBS系)は、コンプライアンスにうるさい令和に、まったくそうでなかった昭和の主人公がタイムスリップするという設定で話題となった。 しかし今を去ること20数年前、逆に「昭和にワープだ」と歌ったのが‟東洋一のサウンドマシーン”クレイジーケンバンド。その恐るべき先見性(? )を、ボーカル兼バンドリーダー・横山剣の話から探ってみた――。 (全2回の第2回) *******
「かっこいい」を探して「昭和にワープ」
とかく令和の現在、昭和を「未開で劣った克服すべき時代」と考える傾向があるのではないか。テレビのバラエティ番組でも、10代20代のタレントに昭和の熱血教師や猛烈サラリーマンの映像を見せては、「ありえない~」「それダメでしょ」などと言わせている。しかし本当に、昭和はそんなにダメでダサくてありえない時代だったのか。まずは以下の曲の歌詞をお読みいただきたい。 かっこいい世界は 探せばきっとある もしもそれが全滅したら いっそ昭和にワープだ ――「かっこいいブーガルー」クレイジーケンバンド(2001) 作られたのは平成だが、この時点ですでに、今の世界では「かっこいいもの」は探さなくては見つからない。しかし探しても見つけられなければ「いっそ昭和にワープだ」、つまり、「かっこいいもの」は昭和にしか存在しないと言っているのだ。バラエティ番組で若い世代の嘲笑と憐憫の対象になっていた昭和にしか「かっこいいもの」はないと。いったいどういうことなのか。 そもそもクレイジーケンバンドはデビューしてしばらくの間、メディアでは「昭和歌謡バンド」といった扱いを受けていた。当時、それに対する違和感もあったというバンドリーダーの横山剣はこう語る。 「いや、本当に昭和歌謡は大好きで、いろんな曲にずっとレシピとして昭和歌謡的要素を入れています。ただ、実際に昭和歌謡の楽曲をカバーしているミュージシャンもいるので、我々はそうではなく、クリエイティブな曲作りの中に昭和歌謡を活かしているんだと言いたかった」 その後の長い活動の中で、いつしか「昭和歌謡バンド」と呼ばれることもなくなったクレイジーケンバンドだが、9月18日にリリースされた通算24枚目の新作アルバム『火星』には、まさに「昭和にワープ」的な曲が収録されているのが面白い。横山によるその曲「2時22分」のセルフライナーノートには、このように記されている。 ここ数年脳内にずっとメロディーやコードやビートを伴って「♪2時22分・・・」とだけ鳴っていたんですが、本年6月、その続きに着工し、完成に至りました。「2時22分」とは、222、つまりニャンニャンニャン、つまりチョメチョメ(by 山城新伍さん)であると。そんな気分を呼び込んでくれたのは、宮藤官九郎さんのドラマ「不適切にもほどがある」でした。