裁判員制度開始から15年 9割以上の経験者「良い経験」も辞退率6割の高止まり
■「裁判員」でいる時間はおよそ17日間
では、実際に裁判員になり審理に費やす時間はこの15年でどう変化したのか。 最高裁の調査では、初公判から判決までの平均日数が制度が開始された2009年には3.7日だったのに対し、ことし2月時点では17.5日にまで延びている。この2週間強の間には、法廷で審理を行う時間以外に、裁判所内の部屋で、被告にはどんな刑が適切かなどを裁判官とともに議論する「評議」の時間も含まれる。 ただ、裁判員経験者のアンケートでは裁判所にくる日数が多いかどうかについては「どちらともいえない」と回答した人が一番多かった。また、議論の充実度については、「十分に議論ができた」との回答が約78%で、好意的に評価している。ある裁判官は、「審理時間は長期化してはいるものの、裁判員にとっては納得して結論を出すために必要な時間だと受け止められているのでないか」と話す。
■性犯罪の刑は重くなる傾向
この15年間では、裁判員によって重い判決を下された裁判も多い。これまで裁判員裁判で裁かれた被告は1万6387人。その中で、死刑判決が下されたのは46人。無期懲役は302人だ。 国民の視点や感覚の反映が目的だった裁判員制度だが、量刑は裁判官のみで審理されていた時代から変化はあったのだろうか。 最高裁の報告書(2019年)では、裁判官のみで審理していた時代に比べて、裁判員裁判では「殺人」事件については言い渡される刑が重くなる傾向にあった。また、「性犯罪」たとえば強制性交等致死傷や強制わいせつ致死傷の事件などでも、裁判員による審理のほうが量刑が重くなる傾向がみられた。全体でみると言い渡される刑のばらつきが裁判官のみの時代よりも大きくなっていて、裁判のプロではなく市民感覚をもった裁判員の視点が判決に反映されていると評価されている。
■社会の出来事を「自分ごと」に
制度開始から15年。ことしの憲法記念日の会見で、最高裁の戸倉三郎長官は裁判員制度がおおむね安定的かつ順調に運営されていると述べた。 去年、東京地裁で殺人未遂に問われた被告の裁判に参加したある20代前半の女性裁判員は、判決後、「自分でいいのかなと不安だったが、いろんな年齢の人の話を聞けて貴重な経験になった」と語った。また裁判員の経験を通して、ニュースで触れてきた事件を他人事ではなく自分の身の回りで起きたらと想像できるようになったという。 社会の目線を盛り込んだ公平な裁判を行うためだけでなく、裁判員にとっても社会の出来事を自分ごととして捉えるきっかけになりうる裁判員制度。もしも選ばれたときに、裁判に前向きに向き合える環境作りが求められる。