Ado、ボーカルディレクション映像で見せた才能を引き出す力 “人の気持ち”に寄り添った巧みな指導法
Adoがプロデューサーを務めるアイドルグループ、ファントムシータの動きがいよいよ本格化してきた。 【画像】初音ミクと並び立って歌うAdo 同グループは、約4000人の候補者のなかから選ばれた、もな、美雨、凛花、灯翠、百花の5人で構成。6月26日に1stシングル「おともだち」でデビューし、同曲のMVは約129万回再生を記録(10月9日時点)。また7月31日にリリースされた2ndシングル「キミと✕✕✕✕したいだけ」のMVは約267万回再生(10月9日時点)と着実に人気を拡大している。さらに11月1日には日本武道館で初の単独公演『ファントムシータ 1st LIVE 2024 「ハイネ」』を開催する。 初ワンマンが日本武道館というのも、日本の女性アイドルとしては稀有なことだ。日本が世界に誇るアーティスト、Adoがプロデュースするアイドルとあって、スタートから破格のスケール感を見せている。 否が応でも高まるファンの期待に応えるために、メンバーたちはパフォーマンス力の向上に励んでいる。その様子を伝えてくれたのが、YouTubeの公式チャンネルで配信された「キミと✕✕✕✕したいだけ」と3rdシングル「魔性少女」のレコーディング映像だ(※1、2)。 ■メンバーに実力を発揮してもらうためのAdoの配慮 「キミと✕✕✕✕したいだけ」のレコーディング映像では、Adoがメンバーに歌のディレクションを行う模様が映し出されている。Adoは、〈1,000,000(ワン・オー・オー・オー・ オー・オー・オー)〉という歌い出しを、単に「ワン」とするのではなく、その前に「ゥ」と発音してから「ワン」と続けていくと「助走がついて歌いやすいかもしれない」とアドバイス。小文字発音はまさにAdo自身の多くの楽曲でも窺える、彼女らしいオリジナルの歌唱法。昨年9月にはX(旧Twitter)で代表曲「唱」(2023年)の歌唱法を公開していたが、それを読んでも“小文字発音”が随所に散りばめられ、それが大きな効力を発揮していると感じさせた。 ほかにも同動画では、Adoが「もう少し大袈裟な表現になってもいいので」「そんなにピッチ感を意識せず、むしろちょっと叫んでる感じ」といったアドバイスをおこなった途端、メンバーの歌の表現が豊かになり、楽曲に表情がついていくのがよく分かった。言葉をスタッカート気味に歌ったり、言葉尻を伸ばしたりすることで、これほど聴こえ方が変わるのかと感心させられるところもあった。グループ全体に浸透しつつある、こういった“Adoイズム”。これらはやはり、Adoが持つ技術力の高さと、現役アーティストとして大きな成功をおさめていることからくる説得力が作用しているのではないか。なにより、Adoが歌い方を実践することで、メンバーとしても自分が抱える課題や「こういう風に歌えば良いのか」というヒントを具体的につかむことができるはず。 加えて注目してほしいのが、メンバーに気持ちよく歌ってもらうための配慮をAdoが欠かしていないところ。「ここを直した方が良い」ではなく、「こうすればもっと良くなる」というレクチャーの仕方。そして、メンバーの良いところを見つけたり、どこがどのように良くなったのかをきっちり伝えている。その様子からは、メンバーの歌い方だけではなく、感情面も細かくチェックしていることが窺える。これらはきっと、自身のレコーディング経験から「どうすれば良い作品が作れるか」が分かった上での褒め方ではないだろうか。メンバーの才能の見抜き方と引き出し方のうまさが光っている。