『近畿地方のある場所について』は白石晃士の影響デカすぎ? 松本まりか出演の約20年前の衝撃作との共通点
小説ならではの仕掛けはどうする?
さらにピンポイントで類似点を挙げるのであれば、「ダムと(に沈む)村」「幼い少女が失踪する」ことなどもあります。個人的には、『近畿地方』で繰り返し言及される「これでおしまいです」という文言は、『ノロイ』で失踪する少女の「たぶんね、もう全部ダメなんだよ」というセリフと、シンクロしているように思えました。 一方で、映画『近畿地方』の懸念点を挙げるとすれば、「文章から想像することでの恐怖があった原作」だからこそ、映像化ではその恐怖が薄れてしまいかねない、ということがあります。 ただ、『ノロイ』は「主観視点」ゆえに見切れている部分もある不安感や、「VHSの荒い質感の映像」など、フェイクドキュメンタリーという特徴を活かした、いい意味で「全部を鮮明に見せ切らない」作品になっていました。そういった見せ方を心得た白石監督だからこそ、『近畿地方』の映像化でも、原作にあった「受け手の想像力を喚起させてこその恐怖」を表現してくれることが期待できるのです。 白石監督は「原作の得体の知れない黒い魅力を、世界中の人々に感染させるべく、映像化という呪術を仕掛けていきます」ともコメントしており、その通りの禍々しさも期待できるでしょう。背筋さんも「私も原作者として力添えができればと思ってます」とコメントしており、その監修があれば、期待できそうです。 とはいえ、原作には終盤で文章ならではの「仕掛け」もあり、これはどうあっても単に映像化するのは不可能とも思えます。映画ならではの新たなサプライズも、期待できるかもしれません。
ヒナタカ