谷口吉生さん死去 87歳 世界的建築家、鈴木大拙館
●文化功労者富山新聞高岡会館も設計 MoMA増改築 「大きな足跡残した」 金沢にゆかりを持ち、米ニューヨーク近代美術館(MoMA)などの設計を手掛けた世界的建築家で、文化功労者・日本芸術院会員の谷口吉生(たにぐち・よしお)さんが16日午前5時11分、肺炎のため死去した。87歳。葬儀は近親者のみで行う。後日「メモリアルの会」を予定している。石川、富山両県には、鈴木大拙館(金沢市)や谷口吉郎・吉生記念金沢建築館(同)、北國新聞社が建設した富山新聞高岡会館(高岡市)など多くの作品があり、関係者が死去を悼んだ。 谷口さんは、金沢出身の建築家谷口吉郎氏の長男として1937(昭和12)年、東京で生まれた。幼少期の3年間、金沢市寺町にあった吉郎氏の生家に疎開し、十一屋小に通った。 慶応大卒業後、米国に渡り、ハーバード大で建築を学んだ。帰国後は東大都市工学科の丹下健三研究室で研究を続けた。79年、谷口建築設計研究所を東京に開いて間もなく、金沢市立玉川図書館を父と共同設計した。 その後、土門拳記念館(山形県酒田市)、資生堂アートハウス(静岡県掛川市)、豊田市美術館(愛知県豊田市)、猪熊弦一郎現代美術館(香川県丸亀市)など、美術館や博物館の設計を多く手掛けた。 ●MoMA増改築 いずれも、装飾を排し洗練されたプロポーション、周囲の環境に溶け込む意匠、入念に計算された動線を特徴とする。97年にMoMAの増改築コンペで設計案が選ばれ、世界的な名声を揺るぎないものとした。 世界的仏教哲学者の思想を建築で体現した鈴木大拙館(2011年)、柴山潟を望む加賀片山津温泉総湯(加賀市、12年)、吉郎氏生家の跡地に整備された金沢建築館(19年)、高岡古城公園の堀のほとりに建つ富山新聞高岡会館(22年)など、円熟の境地を迎えてから北陸に多くの作品を残した。 ●「大きな足跡残した」 金沢市の名誉市民である谷口さんの死去について、村山卓市長は「金沢建築館の名誉館長として、後進の育成や建築文化の継承に大いに貢献いただいた。建築界に残した大きな足跡は計り知れない。衷心より哀悼の意を表する」とのコメントを発表した。