『ウルトラマンブレーザー』田口清隆監督、国会議事堂に注いだ特撮魂 破壊シーンも妥協ナシ
一方、縦軸の絡まなかった第15話はともかくとして、リアル志向の『ウルトラマンブレーザー』と中野が持つカラーはある意味、水と油の感もあるが、田口監督にはひとつ勝算があった。「映画はやることだけは決まっていたけど、シリーズ構成外で、もともとテレビとは全く違う事を描きたいと思っていたんです。そこで今回はやりたいと考えたのが『怪獣映画』です。シリアスな展開や人間関係はテレビシリーズ全25話でしっかりと作り上げたので、その確立した『ウルトラマンブレーザー』の世界観を、怪獣映画という骨子に突っ込んでみました」
第1話の池袋を超える舞台を求めて
すでに公開されている予告映像からもわかる通り、決戦の舞台は国会議事堂周辺で、映画ならではのスケール感が期待される。 「第1話は池袋を舞台にしましたが、池袋のビルの屋上で実景を撮っている際に、プロデューサーの村山(和之)さんへ『1話でこれをやったら、映画はもっとすごいことしないと成り立たないですよね』と話したところ、村山さんも『あ~』と嘆息を漏らしていて(笑)。国会議事堂ついては、以前、目の前の憲政記念公園をロケハンしたことがあって、撮影で使えることは知ってたんです。さらに遡ると、映画『20世紀少年 -第1章- 終わりの始まり』で国会議事堂が爆破されるシーンがありましたが、僕は当時、合成担当で現場にも立ち会っていて、いつか自分の作品で壊したいとずっと温めていた場所のひとつだったんです。それで『今回は国会議事堂しかない』と提案しました」
予告映像からは、その国会議事堂のミニチュアが破壊される場面も確認できるが、これには興奮を隠せなかったファンも少なくないと思う。ランドマークの盛大な破壊シーンは、怪獣映画の花形である。
「『ゴジラ-1.0』がアカデミー賞視覚効果賞にノミネートされたり、ガメラがNetflix で『GAMERA -Rebirth-』としてアニメ化されたり、海外では『ゴジラxコング 新たなる帝国』の公開が控えていますし、テレビでは東映のスーパー戦隊シリーズや仮面ライダーシリーズも頑張っている。今はまさに特撮マニア、怪獣好きとしては堪らない状況だけど、大作の怪獣や破壊描写はほとんど3DCGですよね。自分の理想としては、CGとかミニチュアとか関係なく、的確に使ってどうやって撮ってるか分からない映画を観たいんです。それでメイキングを観て、そこではじめて『こうやって撮っていたんだ!』と驚きたい。だけど一方で、『着ぐるみ怪獣が石膏ビルを吹っ飛ばしてる映像が見たいんだ!』という気持ちもあります(笑)」