「真夏の同窓会」はまだまだ終わらない。駒澤大高はスタイルを打ち出した済美に力強く競り勝ってインターハイ初勝利!
[7.27 インターハイ1回戦 駒澤大高 2-1 済美高 アロハフィールド] 彼らが変わったのは、何も新調されたユニフォームやエンブレムだけではない。もともと持っている自分たちが貫くべきスタイルに、少しずつ新たなエッセンスを加えていくことが、より大きな化学変化をもたらすと信じ、選手とスタッフでより“駒大高校らしさ”を突き詰めていく。 【写真】伊東純也ら日本代表トリオがパリ観光! サングラス&私服姿に「三つ子みたい」「まじで顔小さい」 「今日もOBたちがたくさん来てくれていて、そういった選手たちが今まで大事にしてきたものをうまく使いながら、変化させていくというところを大事にしたいなと思っているので、今回のチームはタレントが前の方にいる分、そういった選手をうまく生かせたらなと思ってやっています」(駒澤大高・亀田雄人監督) 逞しく競り勝って夏の全国初白星!令和6年度全国高校総体(インターハイ)男子サッカー競技が27日に開幕し、駒澤大高(東京2)と済美高(愛媛)が激突した一戦は、後半にMF内田龍伊(3年)が勝ち越し弾を記録した駒澤大高が2-1で勝利。2回目の出場にしてインターハイの初勝利をもぎ取っている。駒澤大高は、28日の2回戦で矢板中央高(栃木)と戦う。 「立ち上がりは前に蹴り込んで、コーナーフラッグの角を取るというのを目標にしていて、それができていたので押し込めたと思います」とキャプテンのDF岡田蓮(3年)も話したように、序盤は済美に勢い。前半2分にはMF沖宮駿(3年)のパスからMF深見月哉(3年)が上げた右クロスに、MF河野椋衣(2年)のヘディングは枠の左へ外れるも好トライ。以降もボランチのMF隅田幸輝(3年)やFW兵頭陸(3年)とFW宮内黄(3年)の2トップも加わって、細かいコンビネーションからのアタックを繰り返す。 一方、「いろいろなものを背負おうと思ってやってくれたんだと思うんですけど、ちょっと思ったよりも身体が動かないというのが率直な印象でした」と亀田雄人監督も口にした駒澤大高は、それでも徐々に前へのパワーとスピードで対抗すると、28分に決定機。右から内田が蹴り込んだボールを、FW岩井優太(2年)が落とすと、FW岸本空(3年)がきっちりゴールを陥れる。「あのタイミングで点が入ったのは自分たちにとってポジティブなことだったかなと思います」とはキャプテンのMF寺尾帆高(3年)。流れを引き寄せたタイミングで、駒澤大高が先制する。 ただ、済美も持ち前のパスワークから34分にビッグチャンス。相手陣内でボールを動かし、河野、深見と回ったボールを、上がってきた左サイドバックのDF垣添光(2年)が枠内シュート。ここは駒澤大高GK丸林大慈(3年)のファインセーブに阻まれるも、「『相手を見て、判断して』というのをどうしても大事にはしたいと思っています」という渡邊一仁監督の言葉を証明するかのようなアタックに、ゴールの香りを滲ませる。 後半7分に輝いたのは「いろいろ工夫して、いかに自分がフリーで打てるかという練習をしてきた」という14番のストライカー。済美は左サイドへ展開すると、河野が完璧なクロス。マーカーとの駆け引きに勝って、フリーで飛び込んだ兵頭は丁寧にボールをゴールネットへ送り届ける。1-1。スコアは振り出しに引き戻された。 追い付かれた駒澤大高は、落ち着いていた。「自分たちは『信じる』ということがテーマなので、しっかりやることをやれば勝てるというところをブラさずに、しっかり足を運んで、しっかり運動量を増やして、ゴールを奪いに行こうという姿勢で臨みました」(寺尾)「クーリングブレイクの時に『オレたちはここで終わらないぞ!』ということを再確認した上で入れたので、流れは悪かったですけど、自分たちのやるべきことやタスクは理解していました」(内田) 11分には内田が、25分にMF富田澪(3年)が惜しいシーンを迎え、ゴールには至らなかったものの、再びアクセルを踏み直すと、この日2度目の歓喜を享受したのは28分。途中出場のDF斎藤俊輔(3年)を起点に内田が左へ振り分け、富田のリターンに走り込んだ内田は「ゴールにパスする感じで冷静に蹴りました」と、ダイレクトシュートでGKのニアをぶち抜く。2-1。駒澤大高が再度リードを奪い取る。 「一瞬の隙でやられてしまいました」と岡田も振り返る済美も、交代カードを切りながら反撃態勢を整えたが、一定の位置まではボールを動かして前進できるものの、最後の局面では駒澤大高の身体を張った守備をどうしても崩し切れない。 「テクニカルな選手も多いですし、かと思いきや、前にパワフルな選手が多くて、嫌なチームでしたけど、自分たちは変に浮き足立ったり、変に慌てたりせずに対応しようと考えていたので、ある程度はしっかり『ゴールを隠す」というところはブラさずにできたのかなと思いますし、失点しなければ大丈夫だというふうに腹を括るというか、そこは落ち着いてできたのかなと思います」(寺尾)。きっちり1点差で逃げ切った駒澤大高が、2回戦へと進出する権利を手繰り寄せた。 10年ぶりに登場した2度目のインターハイで、記念すべき初勝利を飾った駒澤大高は、この試合からユニフォームと、それにあしらわれているエンブレムが新しいものに。「メチャクチャカッコいいです」と内田も胸を張った“新デザイン”の初陣という意味でも、大きな勝利を手に入れたと言っていいだろう。 この日もメンバー外の選手がコートの周りをぐるりと取り囲み、大声援を送り続けていたが、聞けば彼らは合宿先の長野を早朝に出発して、福島の地まで駆け付けたという。 「昨日まで長野県の菅平で、凄くキツい合宿をみんなでやってきて、その中で今朝は4時に起きて、みんな応援に駆け付けてくれているので、そこには感謝の想いでいっぱいですし、本当に誇らしい仲間ですね。駒澤がインターハイで勝ったのは初めてなので、その新しい歴史を刻めたことも自分たちにとっては嬉しいことかなと思います」(寺尾)。数と声で飲み込む“駒大高校らしさ”は、全国の舞台でも十分に発揮されていた。 実はこの一戦が監督としては全国大会の初采配であり、その試合で勝利を手にした亀田監督が、あることを教えてくれた。「OBからも連絡を凄くもらいますし、僕らがこうやって勝つことによって、“同窓会”が始まっていたりするんですよ。それは僕らの1つの強いモチベーションになるので、選手たちにも話をしますし、逆に『君たちが卒業していった時には、何かの機会でそういうふうに集まれるような関係でありたいよね』というような教育もできるので、素晴らしい機会だなと思っています」。 全国の舞台で繰り広げられるOBの“真夏の同窓会”は、まだまだこれからも続けてもらう必要がある。「今回の自分たちはこの大会に臨むに当たって、優勝というところを目標に掲げてやっているので、次の試合で終わるつもりもないですし、次は矢板中央ということで明らかに格上の相手になるんですけど、自分たちはもうそこに勝つことだけを考えて、今日から準備をしていきたいと思います」(寺尾) 真剣に眺めに行くのは、頂上から見下ろす真夏の景色。価値ある1勝を挙げたことは間違いないが、それで満足するつもりは毛頭ない。駒澤大高に起こり始めている化学反応は、きっとここからがより一層面白い。 (取材・文 土屋雅史)