【島々の地域づくり事業協組】 最少規模、行政主導の挑戦 結いワーク宇検村
結いワーク宇検村協同組合は6月26日の創立総会で組織体制が整った。現在、組合の設立登記手続き中。正式に組合となった後、特定地域づくり事業協同組合(特地事業協組)としての▽認定申請▽知事認定▽労働局への労働者派遣事業届出―と進む。派遣職員の採用など組合業務が始まるのは9月の見通し。 宇検村の特地事業協組設立は行政主導型。村企画観光課によると▽2022年に沖永良部島での取り組みを知り▽23年1月に沖永良部島であったシンポジウムに職員が参加▽村内の商工会加盟事業所などに呼び掛け、23年11月に事業説明会(10事業者が興味を示す)▽24年3月に第2回説明会▽出資金や賦課金など具体的な内容を詰めていく段階で設立組合員を5事業者とし、4月18日の第3回説明会で事業計画・予算案などを固めた。組合員事業者の職種は酒造、養鶏場、放送業(エフエムうけん)、老人福祉・介護、旅館・ホテル。うち2事業者は代表者が同じ。 泉清一郎課長補佐によると、同村で働き手不足対応型の事業は初めて。従来は人口減対策が主目的で、実施してきたのは山村留学と地域おこし協力隊。それらによる移住者の定住率は高く、協力隊は9人来て8人が定住している。村は特地事業でも、定住者の増加を期待している。 組合運営の要となる事務局長は、村地域包括支援センターでケアマネジャーを10年務めた、同村出身の米田健太郎さん(54)が就任予定。会計年度任用職員としての更新期を前に、村が事務局長職を打診した。整体師で、鹿児島市で整体院を約10年自営していた経験なども評価した。 創立総会は組合員事業者、役場職員、先行団体・奄美市しまワーク協組役員ら15人が出席。元山公知村長は、近江商人の心得「三方よし(売り手よし、買い手よし、世間よし)」を盛り込み、次のように述べた。 「この制度は人手不足、働き方改革、地域活性化などさまざまな地域課題に力を合わせて取り組むことで、担い手人材よし、事業者よし、地域よしの『三方よし』が期待できる。奄美の先行4組合を参考にしながらも宇検村規模に合わせた着実に粘り強い取り組みが必要。何より協同組合の名の通り力を合わせることが大切。お互い連携を図り育てていこう。組合設立が村内企業の持続可能な事業展開に大きく寄与するものと期待している」 村は移住促進と人手不足対応という両面で、地域に合った制度だとみている。冬場の収穫期に多数の働き手を必要とするタンカン農家なども組合員事業者になり得ると見通す。一方、特地事業協組の取り組みに先行して、村内の複数事業者が外国人労働者の派遣受け入れを進め、今後さらに増員する動きがある。特地事業協組については、様子見の事業者も存在している。組合員には、1日4~5時間と時間を区切った職員派遣を希望する事業者もおり、開設効果をどう発揮していくか注目される。 宇検村組合は小規模自治体での事業モデルになりそうだ。20年国調の村人口は1621人で、県内の特地事業協組の展開地区では最少。全国的にも異例の規模とみられる。 初年度は派遣職員3人の採用を予定している。事務局長就任予定の米田さんは「まず採用職員としてUターンの可能性のある方に声掛けをしていきたい。移住支援制度の情報も集めたい。先行組合から学び、宇検で採用が難しい場合は群島内の他組合に声掛けできるような関係も築きたい」と話している。