IMF、来年の世界経済見通しを下方修正-成長に下振れリスク
(ブルームバーグ): 国際通貨基金(IMF)は、リセッション(景気後退)に陥ることなくインフレを抑制したと世界各国・地域の中央銀行を評価する一方で、来年の世界経済の成長率予測を下方修正し、戦争や貿易保護主義などによるリスクが高まっていると指摘した。
IMFは22日発表した最新の世界経済見通し(WEO)で、世界全体の来年の成長率を3.2%と予測。7月時点の予測から0.1ポイント引き下げた。今年の成長率見通しは3.2%で据え置いた。来年のインフレ率は4.3%と、今年の5.8%から減速する見通し。
IMFはここ数年、世界経済は中期的に、現在と同程度の弱い成長が続く可能性が高いと警告してきた。各国が貧困削減や気候変動への対応に必要な資金を確保するには、この弱い成長では不十分だ。
チーフエコノミストのピエールオリビエ・グランシャ氏はブリーフィングで「下方向のリスクが積み上がっており、世界経済には不確実性が増している」と述べた。
「地政学上のリスクがあり、地域紛争がエスカレートする可能性もある」と述べ、「保護主義の台頭や保護主義的政策、貿易の混乱も世界経済に影響を与える可能性がある」と続けた。
IMFは経済見通しで米大統領選挙に明確には言及していないが、2週間後に迫った選挙がIMFと世界銀行の年次総会に影を落としている。会議には世界の約200カ国から財務相・中央銀行総裁が参加する。会場は米ホワイトハウスから目と鼻の先だ。
ブルームバーグ・エコノミクスが今年これまでに分析したところによると、ドナルド・トランプ氏が公約に掲げている中国からの輸入品に60%、それ以外の国からの輸入品に10%の関税を課すという政策は、インフレを加速させ米連邦準備制度理事会(FRB)に利上げを迫る可能性が高い。
IMFは先週、今年末までに100兆ドル(約1京5100兆円)、世界全体の国内総生産(GDP)の93%に達すると予想される世界の公的債務への懸念を表明した。債務急増は米国と中国が大きく寄与している。IMFは各国政府に対し、借り入れを安定させるための厳しい決断を下すよう強く促している。