北アルプスの山岳シーズン開幕 防災ヘリ墜落の長野県、厳しい救難態勢
北アルプスの山岳観光開幕を告げる「第49回上高地開山祭」が27日、長野県松本市・上高地の河童橋周辺で行われ、国内外の登山・観光客らでにぎわいました。長野県では3月の防災ヘリの墜落事故で登山シーズンの救難態勢が懸念される一方、遭難防止のため実施された登山計画書の提出義務付けや登山者の国際化など登山環境に大きな変化も。登山の受け入れ側と登山者の双方に課題山積のシーズン開始となりました。 【写真】「遭難自体を減らす」長野県が取り組む登山者啓発や届け出義務化
埼玉や愛知など隣接県とヘリ応援協定
開山祭は登山・観光客はじめ山小屋、国・県など行政、救難関係者ら3000人以上が参加。アルプホルンの演奏などでシーズン開幕を祝うとともに山や登山者の安全を祈願しました。開山祭には外国からの観光客が年々増えており、この日も楽しげに写真を撮り合う台湾のグループなどが目立ちました。 3月の墜落事故で唯一の消防防災ヘリコプター「アルプス」と高度な救難技術を身に付けた隊員ら9人を失った長野県は、登山シーズン開幕で救難態勢が厳しい局面に。山の遭難対策では長野県警のヘリ2機とともにアルプスも山岳などに90回近い出動(2016年)をしており、その喪失の影響は深刻です。
山岳遭難対策では5月の連休期間中の5月1日から8日まで警視庁のヘリの応援があるほか、長野県は埼玉、愛知両県からヘリの応援を受ける協定もこのほど締結。隣接県の協力態勢の中で活動を維持する方針です。 ただ、標高3000メートル級の山がある北アルプスなどは、気象の急変、複雑に変わる気流、薄い空気によるヘリの揚力の維持の難しさなど厳しい環境があるため、応援のヘリも高度の低いところでの活動に制限されます。
高度な技術求められる北アの救助活動
長年、遭難対策にも取り組んできた北ア・涸沢(からさわ)ヒュッテの山口孝社長は開山祭の会場で「北アのヘリによる救助活動は極めて高度なレベルが求められ、1~2年の訓練では無理でしょう」と言い、応援のヘリは県警のヘリの後方を支える支援ヘリとしての活動が重要になると見ます。 2016年の長野県の山岳遭難統計によると、同年の遭難発生は272件で、2013年の300件以降減少しているものの270件台が続いており、高止まりの傾向。ここ数年、毎年40人から60人の死者、130人から160人の負傷者を出しています。 同年の場合、272件の遭難のうち半数以上の152件、全体の55%余が槍ヶ岳、穂高、後立山(うしろたてやま)連峰などの北アルプスに集中。北アだけで死傷、生存者を含め165人もの遭難者があり、標高3000メートル級の山岳地帯の過酷な救助活動もうかがわせています。