農産物輸送 陸路から海路へ 物流「2024年問題」で九州産地
運転手の労働時間短縮
物流の「2024年問題」と呼ばれるトラック運転手の労働規制強化が4月に迫る中、消費地への陸送距離が長い九州の産地では、農畜産物の海上輸送が増えている。運転手は船中で休憩でき、労働時間を短縮。コストや輸送日数など課題はあるが、生産物を無事送り届ける道を模索する。 【地図で見る】九州からのフェリー航路 東京まで約1500キロ――。九州の中でも消費地に遠い鹿児島県では、県内の志布志港や隣県の宮崎港からの海上輸送が増えている。JA鹿児島県経済連の子会社であるJA物流かごしまによると、関西・関東方面への農畜産物輸送での船舶の割合は、10年前の5割から近年は約7割まで上昇。野菜では22年度に約2万8000トンをフェリーで輸送した。 志布志から大阪に向かうフェリーは午後6時ごろ出発し、翌朝8時ごろに到着。その後陸送で関西や中京、東京方面へ輸送し、青果物の多くが出荷から3日目に販売される。
課題はコスト、輸送量
課題はコストだ。鹿児島から東京へフェリーとトラックで輸送した場合、トラックだけと比べ運送コストが10トントラック1台で1、2割、3万~4万円高い。同社幹線事業部の早稲田一剣部長は「東京の食卓に運ばなければならず、産地だけの問題ではない。販売価格も上がってもらわないと困る」と話す。 輸送量の限界もある。志布志、大阪航路を運行する商船三井さんふらわあによると、上りの貨物は現時点でほぼ満船で増やす余地は少ない。同社は「農産物は秋から冬の農繁期とそれ以外で量に波があり、年間の定期枠を確保しづらい」と説明。需要の高まりには「大分からの航路を案内するなどサポートしていきたい」と話す。 JA宮崎経済連も消費地への海上輸送を増やす。同連の調査では、東京方面への青果物で海上輸送を使う割合は21年度から22年度にかけ、40%から57%に増えた。 JA全農おおいたは24年度から、これまで陸送だった関西方面への輸送にフェリーを使う予定だ。関東へは19年から貨物専用フェリーを使うが、大分と関西を結ぶフェリーは、出荷と出発時刻が合わず、従来の3日目販売に遅れるため使っていなかった。4月からは大分県から愛媛県までフェリーで運び、そこから関西まで陸送する。運転手の労働時間を削減しつつ、3日目販売に間に合わせる。
日本農業新聞