《安倍政権5年》顕著に増えた訪日外国人 観光の経済成長戦略は描けたか?
来日客増で受け皿不足、人手不足の危機
大阪、京都などの百貨店で人気菓子ポッキー、プリッツの高級版を扱うスイーツ店舗「バトンドール」を展開する江崎グリコによると、大阪高島屋での店舗の外国人観光客売り上げは全体の1割程度に上るといいます。 今年夏からは大阪国際空港(伊丹空港)で期間限定店舗を設置。「今後も(関西国際空港などを含めた)空港などへの出店は検討していく」としています。百貨店ではこのほかチョコレート菓子「キットカット」の専門店や高級ポテトチップスの販売などが続いており、こうした商品展開の背景には外国人観光客がおみやげとして大量買いしていく購買意欲の高さが無視できない要素となっているようです。 インバウンド好調の中で課題はないのでしょうか。 荒木氏は「今後も来日観光客数の増加が見込める中で、ホテル・航空機・通訳などの受け皿が不足していく。国内人口の減少傾向によって受け入れ側の態勢が不足することで、おもてなしの精神が保てなくなる危機がある」と指摘します。 特に関西は中小企業が多く、人手不足の顕在化が予測されています。「ロボットやAI(人工知能)の積極的な導入なども議論に挙げるべきではないか」とみています。
関西三空港の運営一体化に期待
関西地方には関空、伊丹空港のほか、神戸空港もあり三つの空港が近い位置で併存しています。しかし国際線に関しては関空に限定され、インバウンド効果は関空主体になっています。 2006年に開港した神戸空港は需要予測に達しない状況が続いた上、一時主力路線のスカイマークの経営危機もあって先行き不安がささやかれました。しかし、関空、伊丹両空港を運営する「関西エアポート」会社に神戸空港の運営も売却されることになり、三空港が一体化した運営が期待されています。 神戸空港はこれまで三空港の併存に配慮して、一日の発着枠が30往復に制限され、24時間運用可能な空港であるにもかかわらず、深夜早朝の発着はなく、国内線のみの運行になっています。 上村敏之・関西学院大教授(公共経済学)は「神戸空港は需要が伸び悩んでいるというが、日本全体の地方空港を見れば健闘している空港ともいえる。しかし、24時間運用せず国内線に限定されているのは、空港だけでなく神戸周辺の成長を止めている」と話します。 神戸空港の近くには外国人観光客に人気の高い姫路城(兵庫県姫路市)などがあり、「神戸空港も含め三空港で国際線を認めていないのは関西にとって大きな損失。特に神戸では現地に早朝着となる国際便などを検討するべきではないか」と強調。 「インバウンドの急激な伸びによって、神戸空港開港時とは劇的に環境が変わっている。政治が主導し、規制緩和などをさらに進めることで民営会社がフリーハンドで施策を展開できる余地をつくることが、さらなる成長戦略につながる」と指摘しています。