【ラグビー】「ロケットスタート」の習慣&新しいスクラムはどう? 日本代表・坂手淳史が展望。
1日の始まりは「ロケットスタート」。6月6日から始まった日本代表の宮崎合宿では、その日の最初の練習が朝6時に始まる。レスリング形式のセッションに励む。 そこから朝食を摂り、午前、午後のセッションに臨む。合間には全体、ポジション別などミーティングを重ねる。 東京・国立競技場でのイングランド代表戦を22日に控える。約9年ぶりに登板のエディー・ジョーンズヘッドコーチのもと、「超速ラグビー」の落とし込みに急ぐ。 ジョーンズHCは選手に献身を課すことで知られるが、前体制時に主将だったLO兼FLのリーチ マイケルは冗談を交えて言う。 「’15年の時(ジョーンズHCが指導していたワールドカップイングランド大会直前)と違ってすごく楽しい。(以前は)地獄でした! (今回は)選手ひとりひとりのスキル、理解度が高いので、(ジョーンズHCも)やりやすいと思っているんじゃないですか。あまり、根性を鍛える練習をする必要はないかもしれないです」 坂手淳史も笑顔を作る。 「朝は早いですけど、効率よくトレーニングさせてもらっている。エディーさんはリカバリーが大事とも言っているので、いいトレーニング、いいリカバリーを積み重ねていきたいです」 疲労について聞かれれば、「(顔つきは)すっきりしているでしょう? 夜は早く寝られているので」。坂手もまた、かつてジョーンズHCが率いていた日本代表への参加経験がある。いまの指揮官についてこう語る。 「優しいですよ。’13~’14年くらいの時は怖かったですけどね。若手なので、『全然ダメ』と言われていました! いまは穏やかな感じで、色々なコーチに任せていると思います。そのなかで、(動きの)スピードを上げたり、指摘したり。練習のクオリティが高くなっていると感じます」 ポジションはHO。スクラムで最前列中央に入る。 昨秋まで約8年間に及んだジェイミー・ジョセフHC体制下では、独自のスクラム理論を実践してきた。長谷川慎アシスタントコーチのもと詳細な決め事を守り、一枚岩の塊を作った。 実際にぶつかり合う前の動作、姿勢の取り方にもこだわり、レフリーの合図で腕を取りあう頃には相手の姿勢を窮屈にさせる。列強国との体格差を補う工夫を凝らし、互角に組んだり、押し込んだりできた。 現在は、担当コーチが元ニュージーランド代表のオーウェン・フランクスらにバトンタッチされている。方式が変わりそうだ。坂手は明かす。 「スクラムはスクラムなのでめちゃめちゃ変わることはないんです。見ている感じでは、そんなに変わったようには見えないんじゃないかなと。バインドの仕方も変わらない。ただ、フロントローのなかで意識するところが変わるんです」 長谷川メソッドでの積み上げ、新たな取り組みについて、言葉を連ねる。 「僕もそこ(これまで教わったもの)が根っこにはある。そういう部分のコミュニケーションを取りながら、いまのコーチとジョイントしていきたいです」 「オーウェンさんの言っていることに『あ、そうだな』と理解できます。(以前といまとで)スクラムに関しての言葉は違いますが、狙っているところは似たようなところ」 「初めて(代表に来る)選手も多いので、皆でどうしたいかを合わせていく」 世界ランクで7つ上回る5位のイングランド代表との激突に向けては、「時間はないとは思いますが、与えられたことを100パーセントやる」と意気込む。 「やることの目的を意識しながら、(本番までの時間を)有意義に過ごしたい。勝つことを意識する。そこまで持っていける自信はあります」 過去2度出場のワールドカップの次回大会は、2027年にオーストラリアである。当の本人はまず、ひとつひとつのツアーで全力を注ぎたいと述べる。原田衛、佐藤健次という初選出のHOたちとの競争に励む。 (文:向 風見也)