【アイスホッケー】五輪最終予選、日本0勝3敗。~イントロダクション~
「デンマークに6人攻撃をかけるべきだった。 でも、かける場面がなかったんです」(中島彰)
2日目の8月30日。この日は第1試合でノルウェーがイギリスに勝っており、勝ち点を「6」に伸ばしていた。日本の相手は、開催国のデンマーク。ランキングは11位で、予選に出ている4カ国では、もっとも上位だ。3000人を超す地元ファンの中で、日本の勝ち点「3」をめぐる戦いが幕をあけた この日も先制点は日本。またも2つ目のFWラインだった。 1ピリ10分、DFハリデー慈英(レッドイーグルス北海道)がOゾーンに運び、パックがデンマークのゴール裏へ。榛澤が相手のDFとの争いに勝ち、ゴール前に詰めた中島照とFW佐藤優(ディナモ・アルタイ)が2対0、中島照が難なく決めている。 前日に引き続いて先制点のアシストを決めた榛澤は、こう話している。 「デンマークと対戦することは、試合前からワクワクしていました。僕らのシュートでもアンダーソン(GK・NHLカロライナ)から点数が入るんだなって」 会場は一瞬、静まり返ったが、次のシフトでデンマークは同点に。さらに17分には2点目を決め、1ピリを終えている。 2ピリの36分。粘りある攻撃から、日本は2点目を入れる。 日本のOゾーンにあったパックをデンマークがカット、しかしDF佐藤大翔(栃木日光アイスバックス)がニュートラルで取り返し、それをつないだFW入倉大雅(レッドイーグルス北海道)がエントリーする。再び入倉からパックを受け渡した佐藤大は、左スロットへ運んでシュート、その浮き球をFW古橋真来(栃木日光アイスバックス)が叩き込んだ。 古橋はバックスで主力を張っているプライドがあったが、このチームでは4つ目のラインだった。デンマーク合宿ではFWの「13番目」の評価を受けて、大会では控えになることも心をよぎったという。 「4つ目はアイスタイムが限られていて、ゲームの流れを読んだプレーを心がけていました。ここ、パック持てるんだけど…というシーンもあったんですけど、とにかく4つ目としての働きをしなければいけない。それプラス、ワンチャンあれば…という気持ちでプレーしていました」 2-2になったまま、残りの24分間は、両チームともゴールランプが灯らなかった。デンマークのアンダーソンと、レッドイーグルス北海道の成澤優太。2人のゴーリーが、どちらも譲らなかったのだ。 60分を終わって、試合はオーバータイムに入った。3人対3人で、5分間の延長戦。つまり日本にとっては、60分での勝ち点「3」がつかないことを表していた。延長でたとえ勝ったとしても、その場合は勝ち点「2」しか与えられないのだ。 成澤はこう話す。 「ああ、これでオリンピックがダメになっちゃったんだ…というのは不思議と思わなかったです。みんな、とにかく勝つ気持ちで戦っていた。僕は試合が終わったところで、それに気がついた感じです」 60分勝ちを念頭に入れて戦った選手も、当然ながらいた。チームのキャプテン・FW中島彰はこう話した。 「デンマーク戦に60分で勝たなければオリンピックには出られない。でも、それをチーム全体として共有できてなかったんです。正直、その暇もなかった。今からすれば、6人攻撃をかけるべきだったと思います。思いますが、かける場面がなかったんです」 オーバータイムの終幕は63分に訪れた。デンマークが、中島彰と石田がダブルスクリーンになったのを見計らってシュート。これが決まってデンマークが勝ち点「2」、日本は勝ち点「1」となった。