Mリーグをわずか一年で変えた“ネット麻雀の神”渡辺太 最新の麻雀AIで発見「AIがトッププロみたいな手組をしている。多井さんっぽい」/麻雀・Mリーグ
トッププロの叡智が集まったプロ麻雀リーグ「Mリーグ」を1年目から変えてしまった。赤坂ドリブンズ・渡辺太(最高位戦)。現役医師であり、ネット麻雀の世界でも複数回、頂点に立ったことから「ネット麻雀の神」と呼ばれてデビューすると、個人成績以上に他のMリーガーたちに強烈なインパクトを与えた。その渡辺が最新麻雀AIで研究を進めると「AIがトッププロみたいな手組をしている。多井さんっぽい」という印象を受けたという。 【映像】渡辺太、役満・四暗刻の大チャンス! ―チームは準優勝、個人としては1年目のレギュラーシーズンで+36.2。振り返って、どんな印象か。 渡辺太(以下、渡辺) チームとしてはファイナルシリーズもきつい展開が多かった中での準優勝なので、そこは嬉しいです。ただ個人としてはレギュラーシーズンもセミファイナルもファイナルもですがもっとポイントを持ち帰りたかったですね。 打ち筋としては、当時の判断ではそこまで大きなミスはなかったかな、と思っていますが、昨シーズンから打ち方も変わっているので今だったら違う選択をしている場面もあると思います。勝てるように変化はし続けたいです。 ―ネット麻雀の世界で活躍をされて鳴り物入りでMリーガーに。実際にMリーグという特殊な戦いの中で、イメージ通りだったのか、違ったのか。 渡辺 大舞台での経験が全くなかったので、そういう部分での不安は、開幕前は大きかったですが、いざ戦ってみたら数戦で場慣れしたというか、普段通りの麻雀を打てたと思っています。そういった部分での不安が全くなくなったというのは大きい要素かな、と思っているので、今シーズンは初戦からすごく楽しみ、早く打ちたい、という気持ちが強いです。 ―プロ歴がそこまでない中で、いきなり珍しい団体戦に放り込まれた。チームとして戦うところの楽しさや難しさはあったか。 渡辺 最初は全くイメージが付きませんでしたが、チームの雰囲気もすごく良いですし、自団体の先輩3人もすごくフレンドリーに接してくださいますし、麻雀に関してもフラットな目線で「太なら、どうするの?」というセリフも結構、聞きました。話しやすいというか、議論しやすい環境を序盤から作ってくださったので、すぐ溶け込めた部分が大きいし、チームへの愛着もどんどん増していますし、このチームで優勝したい、という気持ちが強くなっていますね。 ―チーム内ではイジられてるシーンも。溶け込みやすさの要因か。 渡辺 越山監督が最初から可愛がってくれたので、そこからイジりやすいといったらあれですけど、チームの末っ子みたいな感じになったのかなと。楽しく麻雀が打てる環境です。 ―渡辺選手が入ったことで「Mリーグの麻雀が変わった」という話をされる選手が多い。自身ではどうおもうか。 渡辺 周りに影響を与えられるようなプロになるというのは、プロ入ると決めた時からの目標ではあったので、自分の打牌や意見に興味を持ってくれる人が多いというのは、素直に嬉しいです。 ―どういう気分なのか。誇らしいのか、恐縮なのか。 渡辺 純粋に嬉しいですね。そういう部分での変な恐縮は、あまり感じません。自分の麻雀にある程度は自信を持ってプロ入りしたので。そういった部分に注目してもらえるのは、純粋に嬉しいですし、僕自身も周りの方の打牌を見たり、意見を聞いて修正しているつもりなので、影響しあっていくのが普通というか、自然なことなのかな、と思います。 ―今後も新たな提案を見せていきたいのか。 渡辺 もうすぐ開幕ですが、去年とはまた違った麻雀になっています。それが正しいかは分かりませんが、そういった部分にも注目してもらえたらいいですね。 ―戦術的なものは、どこまで話せるか分からないが、どのあたりを調整、修正しているのか。 渡辺 押し引きに関しては、そんなに変わらないです。元々、統計やデータで勉強したタイプなので、それを元に局面に合わせて戦っていくと思います。だけど、テンパイより遠い段階、配牌段階でどういう方針を目指すのか、というのは、あまり結論が出ていないというか、研究されていないところなので、そういった部分の変化にいま取り組んでいます。 具体的にいうと、ネット麻雀に強いAIが数年前から複数、出ていますが、その牌譜を見ると結構、打点寄りというか、思い切った、あまり機械っぽくないというとあれですが、それこそトッププロみたいな手組みをしている印象があります。手組みの段階でそちら方向に寄せていこうかなと思っていて、調整をしています。 AIの牌譜を見た時に感じた印象が「多井さんっぽいな」と思いました。僕は結構、攻撃型だったので、多井さんの配牌降りとか、そういう戦術がスッと入ってこなかった時期が長かったんですが、数年前からのAIからの影響も含めて、勉強していくうちに十分に有利な場面がある選択だということが理解できてきました。 多井さんは「攻撃的にしようかな」みたいなことを配信で仰ってましたが、僕は逆に、そちらに寄せて行こうかな、と思ったりしています。 ―トッププロとの技術を照らし合わせるとAIに近い、というところは発見なのか。 渡辺 多井さんがどうやってあの打ち方に辿り着いたのか、というところは正直、お聞きしたことが無いので、そのあたりはわかりません。先見の明があるというか、今のような情報の交換が容易でない時期に、異質といったらあれですが、オリジナリティがあって強い戦術を多々作り出してらっしゃるのはすごいことだと思います。 僕は結構、模倣で強くなるタイプ。ゼロからオリジナルの戦術を作り出すのは向いていないので多井さんこそ「時代を作る」というか、そういう方だな、という印象です。 ―守備寄り、攻撃寄りを修正されている。今年の目標数値の設定は。 渡辺 個人で目標を聞かれるとそれはやはりMVPなのですが、ミスらずに打ってMVPを取りたいなと漠然と考えています。すごい短いスパンの目標で行くと毎試合勝つことなのでそれの延長線上にMVPがあると思っています。 ―チームにとっては2度目の優勝を目指す。そのあたりの意気込みはあるのか。 渡辺 勝っている方が楽しいので、みんなで楽しんで勝てるのが理想ですね。ただ、誰かしら不調な人がいるというのは、麻雀としては自然なことだと思うので、自分がその立場になった時に、適切に反省するのは大事ですが、あまり落ち込みすぎないことは気を付けたいです。逆にチームメイトが不調の時は去年の園田さんのようにその分勝てるような安定感と力強さを持ちたいなと思います。 正直、昨シーズンは、そこまで絶望的な感じではなかったので。来シーズンにそうなった時、雰囲気はどうなるのか試されることもあるのかなと。いつも通りみんなで麻雀の話をしながら乗り越えたいです。 ―趣味はカラオケ。この間、麻雀プロ歌の祭典で「魔法の絨毯」を歌われた。シンガーとして、やりたいことはあるのか。 渡辺 ステージで歌うことは、実は、初めてではないので、でも麻雀プロとしてあの形で歌うことはすごく変な感じはしました。昔から歌は好きだったので楽しかったですが、更にみんな歌が上手くて、イベント自体、観客のようなつもりで参加しました。 ―その反応は、麻雀と同じくらい嬉しかったのか。 渡辺 さすがに麻雀の方が自信はあるので(笑) 歌は自信があるわけではないので。また機会があれば。 ―優勝パーティがあれば。 渡辺 その時考えさせてください(笑) ―病院での非常勤医師は、まだ続けている。Mリーグとの掛け持ちは大変な印象だ。 渡辺 昨シーズンは、大変だと思った時期もあります。でも、みんなそれぞれ大変だと思いますし、それを言い訳にしたくない。スケジュール管理の大切さには気づけたので、今シーズンは、より試合に集中できるような過ごし方をしたいです。完全に医師を辞めるまでには至っていないので、なるべく両立できる形を模索しているところではあります。 ―模倣で上手くなるタイプと話していた。いずれ「太メソッド」みたいなものを構築していきたいといった夢はあるのか。 渡辺 そういう名前が付くことに憧れはあります。実は将棋を見るのが好きなので、「藤井システム」とかかっこいいなと思ってました。ただ自分はオリジナルな選択をしているという意識は薄くて、研究している方のデータをかみ砕いて使っていたり、検討した方とのすり合わせによって知識が深まっていったりとかなので、それに自分の名前を付けられるのは、それこそ恐縮だな、と思う部分もあり、難しいです。 ◆Mリーグ 2018年に全7チームで発足し、2019-20シーズンから全8チーム、2023-24シーズンからは全9チームに。各チーム、男女混成の4人で構成されレギュラーシーズン各96試合(全216試合)を戦い、上位6チームがセミファイナルシリーズに進出。各チーム20試合(全30試合)を戦い、さらに上位4チームがファイナルシリーズ(16試合)に進み優勝を争う。優勝賞金は5000万円。 (ABEMA/麻雀チャンネルより)
ABEMA TIMES編集部