「診療報酬を高く取れそうな診療科が増える」日本の医療制度の特殊性を専門家が指摘 行政によるコントロールの必要性を訴え
政策アナリストの石川和男が8月4日、自身がパーソナリティを務めるニッポン放送Podcast番組「石川和男のポリシーリテラシー」に出演。今年6月、2年に一度の診療報酬改定が行われたことを背景に、今後必要な医療制度改革について専門家と議論した。
6月1日、医療機関に支払われる診療報酬が改定され、初診料や再診料などが引き上げられた。診療報酬は2年に一度改定されていて、今回の増額分は医療従事者の賃上げにあてられることになっている。一方、今年の政府の「骨太の方針」では少子高齢化が進むなか、持続可能な社会保障制度の構築に向けて、医療・介護分野における給付と負担のバランスや現役世代の負担上昇の抑制を図る考えが打ち出されている。 番組にゲスト出演した構想日本代表の加藤秀樹氏は、今後も持続可能な医療制度であるために必要な改革として、まず「行政によるコントロール、需給調整」の必要性を挙げた。日本では自由開業制のもと、医師は免許さえ取得すればどこで何科を開業するのも自由なため、人口の多い都市部に「診療報酬を高く取れそうな診療科が増える」傾向にあると指摘。その結果、小児科や産婦人科など需要のある診療科の不足や、人口減少が進む地方における医療機関不足などの問題が起こっていると言及した。 加藤氏は「例えばドイツだと、この地域には内科はもうこれ以上いらないなど、行政のコントロールが効く。やはり需給調整は重要」と述べ、保険料や税金が投入されている医療費の性格上、行政や公的機関の関与がもっと必要であると訴えた。 さらに、健康保険組合などを運営する保険者によるチェック体制が甘い点にも言及し「保険者が医療の中身をチェックしたり、コントロールできてない。例えばドイツやフランス、イギリスでは、保険者が保険対象になっている薬に効果があるかないかをきちんとチェックする。保険対象になっていても効果がないとなれば、保険対象から外れていく。そういう機能があるが、日本にはそれがない。一度対象になったらずっとだ」と指摘。 加藤氏は「患者は自由に病院へ行ける、医者は自由に開業できる……それは良さそうに聞こえるが、長い目で見るとサステナブルじゃない。やはり、必要なものにはちゃんと保険をかけるけれども、必要でないものは常にそれを省いていこう。余計なことをするのはやめようというコントロールが効かなければ、結局みんな自分たちに跳ね返ってくる。医療保険制度が破綻したら、医者や看護師も困る。そういうことを1人1人が自覚しないといけない」と訴えた。 石川は「道は険しいが、医療制度改革は政治の役割。命と懐に関わる話で、政治家には真剣に取り組んでもらいたい」と締めくくった。